後進国

それはそれは,衝撃的な事件でした。

TBSの『新・情報7DAYS ニュースキャスター』を見てたところ,進行の安住紳一郎アナが,いわゆる「ら抜き言葉」を遣ってました。

あの番組,一般の人とかがVTR中で「ら抜き言葉」を遣っても,字幕では確実に「ら」を入れてるんですね。ですんで,TBSは社員教育として,「ら」を入れるようにしてるものと思ってました。

が,少し前に朝の番組で同じTBSの石井大裕アナが,これまた「ら抜き言葉」だったんで,ちょっと注意して,「次」とか「別のアナウンサー」を見てたら,安住氏も「ら抜き言葉」でした。きっと,TBSは社を挙げて,「ら抜き言葉」解禁にしたんでしょうね。

あ,これまたちょっと前なんですけど,テレ朝でも『激レアさんを連れてきた。』中で弘中綾香アナウンサーが堂々とフリップに「ら抜き言葉」を書いてたんで,テレ朝は解禁と思ってた矢先の,TBSも解禁だったわけです。

テレビ局勤務ではない,いわゆる「フリー」の人たちでは,もはや普通になっちゃってる,って,認識してました。例えば,宮根誠司さんとか近藤サトさんとかが,堂々と「ら抜き言葉」を遣ってるんで,この世界では普通なのか,と,思ってたんですね。

ところが,これもちょっと前の『踊る! さんま御殿!!』では,日テレ青木源太アナが,家族にも「ら抜き言葉」を遣わないように厳しく指摘してる,とのことでした。ってことは,日テレはまだ解禁してないんだな,と。

国語のテストで,動詞の活用の問題が出たときに,これを「普通」と解釈しちゃってる人が,正解できるのか,ちょっと疑問です。

ミクロなことになっちゃいますが,「くまモン」のイントネーションも,局によって違うんですね。

通常(?)は頭にアクセントを置くんですけど,TBSのみ,平坦にいいます。これは,TBSの規定のようです。だからといって,TBSに出てるTBSアナ以外の芸能人が頭アクセントで「くまモン」っていっても,訂正はされないようですが…。

そんな,細かいことばっかり気になっちゃう筆者…。治りません。

それよりも大事件だったのが,「Lamont Peterson」を『WOWOWエキサイトマッチ』では「レイモンド」っていっちゃってること

メキシコの「Juan」を「ファン」から「フアン」表記にしたように,いつの日か修正される希望はもってるものの,「Lamont」を「レイモンド」ってのは,治りません。バカなんでしょうか? だって,「d」で終わってないでしょうに。

同じようなことが,日テレの『その道のプロも驚き! 畑違い先生のスゴ話』って番組でも見られました。

パンダの着ぐるみが頭をぶつけるんですけど,これを「ヘッド・バッド」って誤記してたんですね。ボクシング・ファンなら御存知のように,頭をぶつけんのは「head butt」ですから,濁るはずがありません。こんな恥部を堂々と放送しちゃってるのって,恥ずかしくないんでしょうか。孫の代まで笑われ続けることでしょう。

「レイモンド」表記で,『レインマン』を思い出しちゃいましたよ。あれは,「レイモンド」って名を「レインマン」っていっちゃってた,ってのが,そのタイトルになってますね。ですんで,WOWOWの社員は,全員が自閉症か知的障碍か,ってことに決定なんでしょうね。「Lamont」を「レイモンド」ですもん。誰1人,疑問を唱えなかった,ってことでしょ? ことごとく,どうかしてます。あ,自閉症者は,どうかしてるとは思いませんがね。

英語の「レイモンド」は通常「Raymond」ってつづります。一方,「Lamont」は,後ろアクセントで「ラモーント」みたいに「しか」読みません。決して,ケツは濁りません。「smooth」を「スムース」っていっちゃうよりも恥ずかしいことでしょう。

そういえば,メキシコ出身の「Raymundo Beltrán」のことも「レイモンド・ベルトラン」って表記してますけど,あれは「ライムンド・ベルトラーン」みたいに読むのが正解。やっぱり,WOWOWのスタッフは全員「バカ確定」なんでしょう。スペイン語って,そこまでマイナー?

たぶん,いろんなことが気になる筆者は,ハゲることでしょう。いや,もう進行中なんでしょう。父親も祖父もハゲてましたんでね。

そうそう,放送中では,その「レイモンド・ピーターソン」について「打ち急ぎ」って言葉が遣われてましたけど,これって,まさに「和式」の理想でしょうに。「和式」は「打ち急ぎ」推奨でしょ? 「打ち急ぎ」至上主義でしょ?

かつてWBA108王者だった具志堅用高さんは,的確にパンチを選べる選手でした。今は「天然」扱いですが,ボクサーとしては,決して「打ち急ぎ」をせず,相手が右前に体を傾けたらサウスポーの右アッパーとか右フックを,相手の位置が自身の左になったら左フックを,というように,的確にそのときそのときのベストと思えるパンチを選択して打てる選手でした。だからこそ,13連続防衛を果たしたんでしょうけど,実に巧い選手でした。

でも現在の日本は,「とにかく速く強く」っていう思想になってます。

以前,「ベクトル」に喩えましたね。日本の選手も,「大きさ」は,決して小さくないと思ってます。が,ベクトルには「方向」って概念がありますね。その「方向」が,日本の向かってるところが,ちょっと疑問だったりします。もっといえば,残念だったりします。

確かに,速いリズミカルなコンボは,打ってる側も受けてる側も,爽快です

例えば,右構えが「ワン・ツー→左フック→左の腹打ち→右クロス」っていう5発のコンボを,「パパン・パン・パン・パン!」って,軽快に打てたときの爽快感は,かなり高いものでしょう。でも,現場でそんな5発のコンボを使うことって,ありますか?

いや,4,5発のコンボの訓練も,体の使い方,体重の移動の仕方,肩の使い方,なんかの訓練のために有用だとは思います。でも,試合でも,そんなコンボを,「当たりもしないのに」繰り出しちゃう選手が多いでしょ。名前は伏せますけど,あのサウスポーの名選手扱いの「拳壊し」選手は,「どこでもいいからとにかく強く速く」だったでしょ。で,その結果,何度も拳を折って。自業自得なのに,「強打の宿命」扱い。美談扱い。ホントは,嘲笑対象なのにね…。

そういえば,10日にMikey GarcíaSergey Lipinets(Сергей Липинец)からダウンを奪っての快勝で4階級目の制覇を成し遂げましたけど,その前の2017年1月28日にDejan Zlatičaninを3回に仕留めた右フック,あれ,相手がGarcíaの右になったときに打ったパンチでしたね。

右構えって,右フックを訓練しないんですね。用途が非常に狭いからです。優先順位が低いんですね。

逆に,サウスポーは左フックを訓練します。ふとした瞬間に,相手が自分の左に位置することがあるんで,そこを引っかける左が必要になるんです。が,右構えは右フックを訓練しません。通常は,ね。

ところが,Garcíaは,これが打てちゃってたんですね。こういうのを見ると,まさに「パンチの選択が的確」って感じるわけです。「とにかく強く速く」では,ないんですね。

おそらく,Garcíaは日本的な感覚では「単発」だと思われます。が,違うんですよ。「和式」が「打ち急ぎ」なんであって,Garcíaは「的確」って表現すべきです。

ちょっと例示しましょうか。

例えば,ワン・ツーを打つとします。すると相手は,これを,ちょっとダック気味に外したとします。すると,Garcíaは左アッパーをぶつけるんですね。ワン・ツーによって変わった相手の体勢を,的確に判断して,その時々で最適なパンチを選択するんです。見てて,惚れ惚れします。感心しきりです。上記の5連発は,「相手,どこにいんの?」って思っちゃうコンボです。

いい加減に,速い連打ばかりをもち上げんのを,やめませんかねぇ…? っていっても,解説者が連打至上主義ですから,視聴者もそっちに引っ張られるんでしょうけどね。ほら,「バカの拡大再生産」ですよ。

「和式」は,「方向」が違うんです。違うところに向かってるんです。独自路線を突っ走って,違う競技になりつつあります。それを,カネで補ってるんですけど…。この国は,カネありますからねぇ。

もしかしたら,その完成形が,Jorge Linaresかもしれませんね。スピードに非常に優れて,いい選手だと思います。が,哀しいかな,「和式」なんですね。

たぶん,かなり高い運動能力を有してるんだと思います。だからこそ,惜しいと思うんですね。

あ~,カネのある帝拳プロモーションの豊富な資金力ってのが,大きすぎる魅力だったんでしょうかねぇ…。でも,あそこ,日本でも有数の「和式」ですから,Linaresが技術的によかったか,っていうと,ちょっと疑問。

どうやらWBO130王者のVasyl Lomachenko(Василь Ломаченко)との対戦が決まったようですけど,遊ばれる気がします。だって,「臨機応変度」がありませんもん

ちょっと強めの表現を用いると,Linaresは,というか,「和式」の方向は,「定形」なんですね。離れすぎず,でも,ショートでは何もできず,「そこそこ」の距離で速く強いコンボを,放送できない言葉を用いると「メクラ打ち」する「のみ」なんですね。それの最たる例が,Linaresです。きっとあれが「和式」の理想に,非常に近い形でしょう。

あれだけ速いコンボをもってますから,Ломаченко相手にも,素早いコンボを繰り出すシーンもあるでしょう。が,どれだけ当たることやら…。そもそも,それが順当だったりもするんで,なんで組んでしまったかも謎なんですけどね。非常に悪い表現をしちゃうと,トップ・ランク社とのいい関係を続けるための,「捨て駒」なのかも,とまで,思っちゃいます。

スピードがあるんで,いつまでも希望を抱いたままいられるかもしれません。でも,「和式」は,きっと,「手数のみ」になっちゃうんじゃないでしょうか…。

『WOWOWエキサイトマッチ』中で,Mikey Garcíaを教科書とする日本の選手が多い,ってことが,頻繁に語られます。でも,Garcíaのマネるべきところは,そのパンチの選択性の高さ,確実さです。解説者が,もしパンチの軌道とかコンボとかしか絶賛しないとしたら,その解説者はボクシングっていう競技を知らない,って判断しちゃっていいでしょう。そう,アイツら,です。

近年では,「後進国」って表現を遣わずに,100%「発展途上国」になってますね。前者だと,「後ろに進んでる」って意味にとられかねないからです。そうではなく,進む方向はほぼ同じだけど,「ちょっと遅れてる」って意味で「発展途上国」なんですけど,「和式」は「後進」かもしれませんね。

違う競技をやってる感じ。ゲートボールでフルスイングしちゃってる感じ。あ,ちょっと時事ネタでいうなら,カーリングで思いっきり投げちゃうようなもんかもしれません。

それって,勝ちに近づいてるんでしょうかねぇ…? 「コンボ速いヤツ選手権」だったら,勝てるかもしれませんけどね。あ,そういう競技ができたらできたで,また外国人選手が活躍しちゃうんでしょうか。

参考までに,筆者が見つけたЛомаченко-Linares戦のオッズは,1.17-6.60です。