WBAの総会がらみで,久しぶりにRicardo Lópezを見ました。思ったよりもハゲてませんでしたね。「思ったよりも」っていうか,ほぼまったくハゲてませんでした。オヤジさんはズルムケなのに…。いや,ハゲることを期待してたわけでもないんですけどね。
そのLópez,相変わらずスリムでしたね。たぶん,まだ50kg台なんじゃないでしょうか。ついでにRosendo Álvarezも写真がありましたけど,Álvarezは肥ってましたねぇ。Lópezの対戦者つながりでいうと大橋秀行選手の名前も挙がりますが,大橋選手は,「どっか悪いんじゃないか?」って思うほどに大きくなっちゃってますから,それを考えなくても体型を維持してるLópezに敬服です。
そのLópez,若い頃は,寄生虫がいたとかいなかったとか。そのせいで痩せてたんだそうですね。プロとしては「finito」ってアダ名が有名ですが,若い頃は「delgado」とも呼ばれてたそうです。
あ,「finito」を,そのまま調べると「有限の」みたいな意味が真っ先に出て来るはずですけど(英語でいう「finite」),Lópezの場合は「fino」と「ito」が合わさった語ですから,英語にすると「fine boy」みたいな意味です。
一方,「delgado」っていうのは英語にすると「thin」とか「slim」みたいな意味。
でも微妙なんですよね。「fino」って語は英語の「fine」って意味もあるんですけど,「slim」みたいな,まさに「delgado」的な意味もあるんです。
ですんで,単純に「finito」を「fine boy」って訳すよりは,そこに「thin」って意味を加えたほうが適切なのかもしれません。ボクサーのほとんどが痩せ型ではあるものの,Lópezの場合は,「特に痩せてる」って意味を加えるべきなのかもしれません。
次。
今,見てみたら,ずいぶんと大昔なんですね。
今の住所とは違うんですが,前の家から出社する際に,ちょくちょくIsmael Salas氏に会ってました。また別の日には,坂本博之選手ともスレ違いました。そう,坂本選手が畑山隆則選手のWBA135に挑む直前のこと。どうやら,2000年10月11日なんだそうです。まだ筆者が「若僧(youngster)」だった頃ですね。
あ,繰り返しになりますけど,「youngster」みたいに「ster」がつくと,「それ以外は全然ダメ」ってことを意味します。ですんで,ジョー小泉氏が「speedster」って語を多用しますけど,あれを英語圏の人が見たら,もしかしたら殴り殺されます。誉めてませんもん。「お前,速いだけだろ?」ってことですからね。日本語でいうところの「貴様」みたいに,一見すると誉めてそうで,でも「まったく」誉めてない言葉ですから,殴り殺さねかねません。罵倒ですもん。豊田真由子氏を超える罵倒ですから。豊田氏の「このハゲー」は事実でしょうけど,「speedster」は見る目のない人物が,見えないところまで推測して「ダメ」っていいきってるんですから,タチ悪すぎです。
あ,で,Salas氏に話を戻すと,『Ring』に「Best I Trained」っていうコーナーがあるんですが,ここで「Best Chin(最も頑丈だった選手)」として,元WBA112王者のแสน ส.เพลินจิต(Saen Sor Ploenchit)を挙げてました。
で,そのコメントとして「 Now he’s a little punch-drunk because he took so many punches. It’s good to have a good chin but at the end of the day, in the second life, not as a fighter, they (become) a problem.」っていってましたね(たぶんスペイン語からの英訳)。わりと好きな選手だっただけに,ちょっと哀しくなりました。
ちなみに,そのSalas氏と,ちょっとだけ喋りました。というのも筆者,スペイン語を実際に遣ったことが,ほとんどなかったからです。わりと親しく喋ったのはメキシコ系のアメリカ人で,向こうもこっちも,英語とスペイン語のちゃんぽんだったんですね。でも,その人物,筆者の英語もスペイン語も,ほとんど正してくれませんでした。「子どもみたいな英語しか喋れないからさぁ…」みたいなことは伝えてたんですけど,彼曰く,「オレの日本語よりもはるかに上手いぜ」と。でも,こっちにしてみたら中学から何年も英語を学んできてたわけですし,訊いたら,そいつ,日本語はちっとも学んだことないんだそうですから,何を比較して「オレの日本語よりも」なんだか,謎でしょ。たぶん「オレの日本語よりも上手いぜ」は,誉めてませんよね。
そういえば畑山選手はショートの巧い選手でしたが,晩年は特に,ロングのキレが欠落していきましたね。こういう欠陥があり得るんです。ショートが巧くなると,日本選手は特にショートがヘタなんで,スパーなんかをすると,ショートで潰せちゃったりするんです。
ちょっと食っても,スパーですんで,ちょっと強引に入れちゃったりします。で,近づいてボコボコ,と。
その結果,ショートが楽しくなっちゃって,ロングの練習をしなくなっちゃうことがしばしば。それが高じると,ショートは上達しても,ロングが衰えていく,っていうことになっちゃうんですね。畑山選手には,その傾向がありありでした。
畑山選手って,若い頃には強烈なワン・ツーとか,飛び込んでの左フックとかで絶妙なKO劇も生んでましたよね。ところが晩年,そのロングの華麗なボクシングが失せちゃってました。これが難しいところ。村田諒太選手とか井上尚弥選手なんかに「ショート,ゼロじゃん」っていってますけど,かといって,ショートを身につけて,それが楽しくなっちゃうと,悪影響が起こり得ます。とはいっても,あの2人は「ショート,ゼロ」のままなんでしょうけどね。ゼロのまま終わるんでしょう。
スパーっていうのは,気をつけないと,楽をしがちなんですね。Jorge Linaresがスウェイを多用しますが,あれはたぶん,スパーではあれでパートナーのパンチを外せてるんだと想像します。どうやらWBC135王者のMikey Garcíaとやるようですけど,Garcíaは伸びる長いパンチを打てちゃう選手ですから,Linaresがスパーの調子で「外したつもり」のスウェイをしたところを,突かれちゃうんじゃないかと思うんですね。
スパーではたぶん楽勝なんでしょうが,それはスパーでの話であって,誰か小言をいう人間が近くにいなきゃいけません。たぶん周囲はほぼ全員が「イエスマン」か,ボクシングを少しもわかってないヤツらなんでしょうから,そんな,「外したつもりのスウェイ」で倒れる場面しか浮かんできません。
そういえば,ここんところ,足利尊氏の肖像が「違うんじゃないか」っていわれてるようですね。700年くらい前の人間ですから,「オレ,見たよ」って人は現存しないわけで,その新説も眉唾感がないわけではないものの,こうして歴史は塗り替えられていくんでしょうね。
わりと好きで,BS-TBSの『諸説あり!』っていう番組を見てるんですけど,この番組によると「関ヶ原の戦い」ってのが,伝えられてるものとは随分と変わっちゃうんだそうですね。
今さら中年の筆者が日本史を学ぶことはないはずですが,筆者がもし今,日本史のテストを受けたら,非常に悪い点をとることと思われます。かなり説が変わってますからね。現時点ではまだ「関ヶ原の戦い」は不変のようですけど,あと何年かすると,変わっちゃう可能性が非常に高いそうですから,ここでも間違えるはず。
『諸説あり!』って番組では,いろんな大学の教授,准教授とか,歴史学の研究者とかが新説を提供してます。それがあるからこそ,毎週毎週,放送できてるんでしょうけど,それと比べてボクシング界の不活性ぶりっていうのは,どういうことなんでしょうか? 果たして,現状の定説は,ホントにそこそこ正しいんでしょうかねぇ…?
ここで何度も書いてるように,筆者は大いに怪しんでます。例えば,「サウスポーを相手にしたら左に回れ」とか「腹打ちはジワジワ効く」とか。和製英語が多すぎるのも問題でしょうし,いろんな怪しげな点があります。まぁ,だからこそ,ほぼ毎週,ネタがあるんですけどね。
ただ,解説者陣,評論家陣,指導者陣がバカなだけならまだしも,視聴者や選手,練習生が,それを無批判的に,あるいは,押しつけ・暴力的に従ってて,正されない,ってのは,問題なんじゃないでしょうか? ちょいちょい書いてる「バカの再生産」ってヤツですけど,バカがバカを教育してるだけでは,他の意見が入るスキがありませんから,バカが育っていくだけ,ってことになります。
で,問題は,これに気づいちゃった場合,ですね。それが引退後,ヨボヨボになっちゃってからなら,まだ諦めがつくかもしれません。あ~,でも,「あんとき知ってれば…」っていう後悔みたいなものがあるんでしょうか。
あくまで私見ですけど,日本においては,上からの押しつけがほぼ絶対的なんで,疑念を抱いても,それを実践する機会がないように思いますね。
かつて沼田義明氏が指導に疑問を抱いて,で,ジム内では従ってるフリをしつつも,隠れてコソコソと違うことをしてた,みたいなことをインタビューで語ってましたけど,「和式」の押しつけから避けるには,それしかないように思います。
とはいっても,時間は有限で誰にでも同じですから,なかなか困難な気がしますね。ジムで肉体的に「のみ」疲れる訓練をして,なおかつ,他の練習ができるか,ってことを考えると,ね,難しいでしょ。
では,「和式」は指導者層,解説者層だけの責任か,ってぇと,そうでもないように思ってます。選手やファンにも,疑問を抱かない責任はあると思ってます。いや,抱いたとして,どこでどうそれをクリアするか,っていう大きすぎる問題があるんですけどね。
本来であれば,歴史研究家に相当するボクシング評論家みたいなポジションの人間が「これ,怪しくないか?」っていうべきなんでしょうけど,そんなヤツらに期待はできません。だって,ほぼみんな,「あんな欠陥だらけ」の村田選手を絶賛してますもんね。あ,力のあるジムの選手だから,批判できないのかもしれませんけど…。でも,それを圧してでも,ダメなもんはダメ,って,ダメなところを指摘すべきな気がしませんかねぇ…。
って,いいつつ,まるで期待してませんけど。
「香川照之さんがうるさい」とかいう以前に,解説者のいってることのほとんどが,都市伝説なんですがねぇ…。
あ,そうそう,念のため。
「和式」をバカにしてるようですけど,筆者は,心の底から「和式」を信じ込んでる人たちに敬服してます。
だって,たぶん間違った教科書に従って訓練して,トップまで行けちゃってるんですからね。おそらくは誤った都市伝説なのに,それを実践することによって,あと,莫大な経済力によって,結果的にはトップにまで行けちゃってるんですから。あ,間違ってないであろう教科書を読んでりゃ,これだけの経済力という強大な力があれば,もっと行けそうな気はしなくもありませんけど,結果としては,そこそこ行けてるんですから,そりゃ,感服です。
ちょっと皮肉なモノいいかもしれませんけど,「こんなん」で,行けてるんですもんね。