いいんでしょうか? いいんでしょうねぇ…。
カゼ薬のCMで「効き目に一番こだわるあなたに」ってセリフがあります。「こだわる」っていうのは,簡単に申し上げると「それ以外は全然ダメ」って意味にもなっちゃいますから,「効き目は抜群だけど,異常なまでに苦いしデカいし,飲み込んだ後も口の中に苦味が残り続ける」っていう解釈も可能なんですね。そんな意味はないとは思いますけど,「こだわる」っていうのは,そういう意味です。
そうでなくとも,わりと最近までは「小さいことを気にする」みたいな意味でしたから,カゼ薬にも関わらず,「普通,効き目は二の次,三の次なんだけどね」,とも解釈できます。古典的には,ね。バカにしてるでしょ。
ジョー小泉氏が多用する「speedster」って語も,英語では,「スピード以外はまるでダメ」って意味の単語。ですんで,「speedster」って英文にあったら,「パンチング・パワーはゼロ」,「触られたら倒れちゃう」,「でもスピードだけはあるよ」って解釈すべきです。これは「こだわり」みたいに日本語で時代とともに変わるものではなく,英単語では「そういう意味」ですから,小泉氏のは完全な誤用です。まるで誉めてませんもんね。カラオケのリモコンで殴られても仕方ないくらいの,非礼な侮蔑です。
あれで英語が喋れる設定になってるんですからねぇ…。誰か,指摘しないんでしょうか。とり巻き全員,イエスマンか,買収してるか,なんでしょうか? 「科学か否か」っていう問題とは別に,言葉も不自由なようです。
話を変えましょう。
立場が変われば見方も変わることを痛感しました。
農家の方と喋ってたときに,昨日が晴天でわりと暖かかったことをいって,「昨日はいい天気だったのに…」みたいなことを口走ったんですね。すると農家さん,「『いい天気』って言葉は,我々には当てはまらないことが多いんですよ」,と。
晴れ,しかも,今は冬ですから暖かいことを「いい天気」って表現するのは,それを期待する人間に限られるようです。ですんで,雨も降らなきゃ困る農家さんからしたら,晴天は必ずしも「いい天気」ではないんだそうです。不覚でした。
「可能性」って言葉も,その事象が起こることが望ましい場合にのみ用いるそうですね。ですんで,雨を期待してる人に対してだったら「雨が降る可能性がありそうですねぇ」は「よし」。でも,たぶん地震を望んでる人はいないでしょうから,「大地震の可能性」ってのはダメ。この場合は,「危険性」とか「危惧」とか,そんな言葉を用いるべきなんだそうです。
それ以来,わりと気をつけてきいてると,確かに,テレビなんかで気象情報を報じる人たちは,「いい天気」って表現を遣ってません。気象予報士以外の人たちは平気で「今日はいい天気で…」みたいにいっちゃうんですけど,それはいってみれば,「お前は晴れを期待してんのね」ってことのようです。
てなわけで,「いい」,「悪い」っていう,評価を伴った言葉を用いるときには,お気をつけください。少なからず,当てはまらない人がいますんで。
いつだったか,マラソンの解説者もインチキ言説だらけなんですかね? みたいなことを書いたところ,お便りをいただきました。
この方は陸上競技に明るいわけではないものの,プロ野球ファンで,気になる番組があったとのこと。
何かの番組で,元ヤクルトの伊藤智仁投手のことを,「わずか2年半で終わった選手」みたいに報じたんだそうです。見てないんですけど,読んだ感じだと,「悲劇のヒーロー」みたいに扱われたんだそうです。
が,実際には伊藤投手は,その後,ちゃんと復活して,大活躍を遂げたんだそうです。「ちっとも『悲劇のヒーロー』じゃないよ」とのこと。報じ方に,意図が感じられたんだそうです。
そもそも筆者はその番組を視聴してないんで詳細は不明ですけど,さしてプロ野球に明るくない筆者でも,伊藤投手の名前は知ってます。こんなヤツが知ってるくらいですから,そこそこ以上の名選手なんでしょう(そのくらい,無知です)。
が,まぁ,ねぇ…。ボクシング界もそうなんですけど,つくり手に「あるストーリー」があって,そこに誘導するようにつくられるのは,わりと想像に難くありません。想像ですが,きっと「やっちゃってる」んでしょう。
それが,メールをくださった方にしてみれば「何だよ,この情報操作は?」みたいな感じだったんでしょうね。
と,想像するんですけど,ボクシング界は,そもそもの試合解説の段階で怪しいこと「だらけ」ですんで,ねぇ…。
とはいえ,タレコミ,ありがとうございました。プロ野球においても,怪しげな情報操作があるんですね。無知,あるいは,記憶が曖昧な視聴者を誘い込むことがあるようで…。
野球っていう,ボクシングに比してメジャーな競技においてもそうなんですから,ほぼ全員が競技経験のないボクシングなんて,もっと簡単に情報操作できちゃうんでしょう。たぶん,マスコミにとって,ボクシングのイメージ操作なんて,かなり容易なんでしょうね。
ということで,怪しげな情報が出回ってます。感覚的には,9割以上が怪しい情報です。正しい教育をすべき立場にあるはずのボクシング解説者のいってることの「ほとんど」が怪しい情報です。
だって,パンチが強いだけで拳ぃ壊れませんもん。頭みたいに硬いところを叩いちゃった「悪い証拠」ですもん。称えるべきではありませんよ。たぶん,怒られますけどね。
まぁ,いいや。
『Ring』に,Greg Haugenが闘った過去の選手についてのインタビュー記事が出てました。あ,「Haugen」って姓は,通常,「ハウゲン」風に読むもので,「ホーゲン」のようには読みません。
そのHaugenは1992年4月3日に元WBAライト級王者のRay ManciniとやってTKOで勝ちますが,このことを振り返って,「Ray was slow and he telegraphed everything.」って語ってます。
ここで「telegraph」って語を遣ってるのがポイント。和製英語で「テレフォン・パンチ」って言葉が遣われますが,これに相当する英語は「telegraph a punch」です。「電話」ではなく「電報」です。
「テレフォン」には,「電話をかけて知らせる感じ」って説と,パンチを打つために振りかぶった手が受話器を握ってるよう,っていう2説がありますけど,英語では,どちらでもありません。そもそも「telephone」ではなく「telegraph」ですから,前記の2説でどちらかを推してる文章を見たら,「英語に当たれよ」ってことになります。
語源の話を続けましょう。
「southpaw」ってのは,「south」が「南」で,「paw」が「腕」,「足」って意味の英単語。で,どうも,かつてはアメリカの野球場建設の際に,打者に直射日光が当たらないように,バッターが北西に位置するようにつくった,とのこと。
すると,左利きのピッチャーの腕は南(south)から出てくるんで,「southpaw」と。これが,わりと定説になってるんですけど,どうやら,そんな野球場が盛んに建設される以前に,「southpaw」って単語は存在したんだそうで。
ってのを,何かのテレビで見ました。ですんで,どうも,「南から腕が出てくる」説は,眉唾なんだそうです。
話を戻すと,かつて,スピード溢れる闘いぶりで人気を博したManciniでしたが,Haugenは「何もかもバレバレ」っていったわけですね。そんな記事を発見しました。
その関連で,久しぶりにHaugen-Julio César Chávez戦を見ました(これ,1993年2月20日ですって)。
で,改めてChávezの強さに感心したと同時に,Chávezの強さの一因はこれかなぁ,って感じるものがありました。
あ,なお,これ,Haugenが,当時Chávezが80戦以上して全勝だったことに触れて「アイツぁメキシコのタクシー運転手とばっかり,やってきたんだろ?」発言をした試合でした。で,惨敗した後に「これまでやってきたヤツらは,異常に強いタクシー運転手だったのね」っていったことで知られます。ちょっと粋なコメントでしたね。
で,Chávezの強さですけど,Chávezって,その強さの一因に「コンボの的確さ」ってのが挙げられましたが,どうも,Chávez,パンチを途中で投げ捨てちゃってるように見えました。
右クロスでいうと,体が回転して右肩が自分の顔の横に行くくらいまでしか,「そのパンチ」に意識はなくて,そこから先は肩から先を投げ捨てちゃってるように見えたんですね。あー,わかりづれぇ…。
パンチの動作が,「1」~「10」としましょう。すると,普通の選手は「10」までの動作が終わってから「次」を考えるんですが,Chávezは「6」くらいで「次」に思考が移ってるんじゃないか,と。ですんで,「7」くらいからは「次,何ぃ打とうかなぁ」っていうモードなんじゃないかと思うんですね。
しばしばボクシング解説者が,「才能」とか「当て勘」とかいう,非常に曖昧な言葉しかいわないことがありますけど,解説者とか指導者とかは,その源を喋る必要があります。例えば,野球で,デカいホームランを見て「見事なホームランでしたねぇ」ていうのは,解説でしょうか? ボクシング解説者のほとんどが,「この程度」な気がします。それは解説じゃなくて感想だろうよ,っていうレベル。
Chávezを改めて見て,その「思考」の的確さに甚く関心するとともに,「思考開始」の早さを痛感しました。それはパンチを早い段階で投げ捨てちゃうことに起因するんじゃないか,と。そして,「こりゃ勝てねぇわなぁ」と。脱帽でした。
Chávezって,個々の要素で,それほど傑出したモノがある気がしませんね。目にも留まらぬスピードがあるわけでもなし,強打者ではあるものの1発で仕留めきるほどの傑出した強打があるわけでもなし,と。でも,強打を活かす思考開始タイミングの早さが感じられました。
実はこれ,「蹴り」には,わりと普通に用いられてる概念なんですね。
蹴りには「抜き」と呼ばれる,早めのリリースがあります。腰を入れて,ヒザを入れて,で,その後,ヒザから腿の辺りを引くようにすると,ヒザ下が飛んでいくんです。
ヌンチャクを思い浮かべてください。最初は攻撃方向に振っていきますが,ある時点から,引くでしょ。すると,ヌンチャクの関節部の「向こう側」が,鋭くヒットする,と。この概念が,蹴りには存在するんですね。
頭の足りない「科学」標榜者が,パンチにおいても,この「ヌンチャク」的な効果を説いてますが,パンチと蹴りとでは,そもそも関節の有無という大違いがあります。パンチはヌンチャクと違って,引きゃ,その時点で引かれるんですね。ヌンチャクでいう関節部,蹴りでいうヒザが,パンチにはありませんから。あれのどこが「科学」なんでしょうか? 妄想でしょ。自分に都合のいい「妄想」です。寝言は寝てからいえよ。
アマチュアとトップ・プロとで,この間に「思考」が存在するか否か,っていう違いがあります。今はわりと,アマチュアでもいいフォームで蹴る人が少なくありません。でも,蹴りを放り投げる,リリースしてからの「心のもちよう」に違いがあるんですね。
蹴りを放ってから,「お,ヤベっ」って思って防御動作に移ったり,「チャ~ンス!」とばかりに次の攻撃を見つけてたりします。あ,絶妙な選手は,ですけどね。リリースが早い分,わりと早めに「次」を考えられちゃうんです。
実際のところはわかりませんけど,トップ・プロとアマチュアとに,それほど大きな思考パターンの差はないと考えます(あ,たぶん誤ったことしか仕込まれてない人は別ね)。が,トップ選手は,思考時間が長いんですね。
誰だったか失念しちゃいましたが,野球の名バッターで,「ボールが止まって見える」ってことを,いったとかいわないとか,って話がありましたね。止まって見えると,「お,ここを叩け!」って,判断しやすくなります。パンチや蹴りのリリースのタイミングが早いと,そんな時間が生まれるんですね。
Chávezのパンチには,そんなものを感じました。リリースが早い,意識をもってる時間が短い,そんな表現で,伝わりますかね?
そりゃ,連勝続けるはずです,って。