故意のバッティング

長男に否定されました。

「味蕾」の話です。「味蕾」ってのは,舌の味を感じる器官のことですが,筆者が子どもの頃は,「味蕾」は舌の部位によって異なる,厳密には憶えてませんけど,舌の先っちょのほうは塩味を感じる部分,っていう風に記憶してたんです。

ところが現在では,「味蕾」に部位的な差異はない,ってことが定説になってるんだそうです。ちょっと勝ち誇った風に筆者が部位によって異なる「味蕾」のことをいったところ,長男が「いや,違うよ」と。ハナからありませんけど,オヤジの威厳はガタ落ちです。

そんな,間違いが蔓延したシーンを見ました。

日テレでやってた『妄想ふくらむフグ女たち』って番組をちょろっとだけ見たところ,中島健人さんがアッパーを勘違いしてましたねぇ。腕力で突き上げてました。そんなん,腕が疲れるだけで,効きやしない,ってのに…。

また,ブームなんでしょうけど,中島さんはキック・ボクシングをやってて,そこでアッパーを勘違いしてただけでなく,右足でミドル(腹の高さ)を蹴ってたんですね。

実戦感覚,ゼロ。だって,右足で蹴る腹部には,急所なんて,ありませんもん。腹部を蹴るんだったら,左でなきゃ。右は,いってみれば「疲れるだけ」です。左足を前に構える「右構え」なんで,右足のほうが蹴りやすいのはわかります。でも,トレーナーも知らないんでしょうかね。トレーナーって,そういうことくらい知ってるべきなんじゃないでしょうか…。まぁ,資格制ではないんですけど,あまりにも知らなすぎますよ。

アッパーも,右のミドル多発も,厳しく矯正すべきでしょうに。もしトレーナーが資格制だったら,完全にアウトでしょ。あ,その資格試験の審査をする人間も無知なんでしょうかね。だって,ボクシング解説を生業としてる横分けオヤジが,8割か9割,インチキですもんねぇ…。

笑いが欲しいんならともかく,酷すぎでした。ってことは,一般の認識は「そんなもん」ってことでしょうね。「そんなもん」が,つまりはバカが,蔓延してます。日本全国,ほぼ全員がバカです。もちろん筆者も含めて,ね。あ,ボクシングに関してだけは,10段階で「6」くらい行ってる自負がありますが。

腕力で力いっぱいに打つアッパーも,腰の高さまで右足を力いっぱい振り上げる右ミドルも,当然のように疲れます。そのせいで「やった気分」になれちゃうんですよね。大きな充実感があるんですよね。勘違いなのに。これを自慰行為といわずに,何と呼びましょうか。

テレビで全国に向けて「自慰」ですからねぇ…。全面的にモザイク処理をすべきな気がします。あれを放送できちゃう感覚にも疑問を抱きますが,日本全国,ほぼ全員が勘違いしてるんでしょうから,仕方ないんでしょうね。

あ,それから,「Danny Román」がまた来日するようですけど,彼の姓は「Román」ですからね。くれぐれも,お間違えのないように。

いや,ね,かつてビートたけしさんが,御自身が人一倍,放送禁止用語に気をつけてる,って旨のことをいってましたけど,筆者も,外国語をカナ表記することに困難を感じてはいます。

ですんで,「James」を筆者は「ジェイムズ」って書くものの,「ジェームズ」も,「ジェームス」も,「よし」とはしてます。でも,「Román」ってわざわざアクセントの位置を明示してあるにも関わらず,頑なに「ローマン」って間違い続ける感覚は,正直,理解できないんですね。

だって,これはクセの問題ではなく,正誤の段階で明らかな「誤」ですから。こんな間違いが蔓延してる国を憂います。その国民ではありますけど,これは恥でしょ。「v」みたいに日本にない音ならまだしも,ある音で,しかも,伸ばす棒までつけてるのに,その位置が明らかに間違ってるんですから。赦されるものではないと思います。

そういえば,『サワコの朝』に『陸王』での陸上競技つながりで高橋尚子さんが出てました(高田文夫さんが,「役所広司稲川淳二にしか見えねぇ」っていったことが忘れられず,笑ってしまいます)。興味深く拝見して,で,筆者は陸上競技にはまったく明るくないもんですから,高橋さんの話に全面的に同意してきいてたんですけど,もしかして,陸上競技に明るい方から見たら,高橋さんの言説の8割以上が「ウソ八百」なんでしょうかねぇ…? ボクシングに関していえば,テレビで喋ってるヤツらのいってることの8割以上が無知すぎるインチキ発言ですから,もしかしたら,その調子で陸上競技のレジェンドも,ホラ吹きなのかなぁ…,なんて思いながら見てました。もし陸上競技に明るい方いらしたら,教えてください。

ということで『WOWOWエキサイトマッチ』にてVasyl Lomachenko(Василь Ломаченко)Guillermo Rigondeaux戦を視聴しました。

あれ,明らかな反則ですよねぇ…。でも解説者,ノー・タッチ。何なんでしょうか? 贔屓が過ぎるというか。無知というか。能無しというか…。あれは触れなきゃいけないでしょ。義務でしょ。

20年ほど遡りますが,1997年6月28日に大事件が起こりました。そう,Mike TysonEvander Holyfieldの第2戦です。

このとき,TysonはHolyfieldの耳を噛みちぎって失格負けしました。が,このときも無能な解説者は「そのこと」を無視。そのせいで,Tysonが100%の悪人になりました。

あ,Tysonを擁護する感じになっちゃいますね。その気は,そんなにありません。耳を噛むのは明らかすぎる反則ですし。さらには噛みちぎっちゃうなんてのは,赦されることではないでしょう。

あの試合,「世紀の一戦」を意味する「Fight of the Century」をもじって「Bite of the Century(世紀の噛みつき)」なんていわれたこともありましたね。こんな感じで,英語圏の人たちはダジャレが大好きです。高尚な遊びです。日本的には単なるダジャレなんですけどね。

でも,Holyfieldの闘い方,汚すぎましたよ。

そもそも,第1戦からHolyfieldは反則盛り沢山でした。頭をぶつける,ヒジをぶつける,腕を極める,などなど…。万一,筆者があの試合のレフェリーだったら,途中で反則負けを宣しちゃってたかもしれないくらいの反則オンパレードでした。

そして第2戦。

杞憂が本当になりました。初回からHolyfieldは反則だらけでしたよ。もし筆者がTysonの立場でも(あり得ませんけど),キレたかもしれません。それくらいの反則だらけでした。

でも,それを解説者は触れなかったんですね。あれだけ反則ばっかりだったのに…。触れるべきでしょうに。

しかも,浜田剛史氏なんて,Tysonの大ファンだったわけですよ。解説者っていう立場すら忘れるくらいの大ファンだったんですから,擁護すべきだったと思われますけど,Holyfieldの反則にはノー・タッチ。

Holyfieldって,なぜか日本では「紳士的」ってことになってるから,ってのが,いくらか影響してるんでしょうか? 「イメージ」のみで,いいんでしょうか? 解説者ってのは,「一般のイメージ」をなぞるだけでいいんでしょうか?

それ以来,ずっと疑問に思ってたことが,Ломаченко-Rigondeuax戦で解けました。

あの人,バッティングに,よくいえば「寛容」,ハッキリいうと「鈍感」なんですね。わかってないようです。あれだけ故意に頭をぶつけてんのに,それを「まったく」指摘しないんですから。見てないんでしょうか? そう思うくらいに「鈍感」。というか,「無視」。

あの試合,ヘタすりゃ失格を宣されても仕方ないくらいに,Ломаченкоは故意に頭ぁぶつけてたでしょ。2ラウンド目だったかは,派手にぶつけてました。

これには,「accidental head butt」を「偶然のバッティング」って安易に訳しちゃってることも原因してるように思われます。

以前にも書いたように,闘ってれば,ガンガン頭ぁぶつかるんですよ。で,「accidental head butt」の対語が「intentional head butt」なことを考えてください。

「intentional」ってのは,「故意の」って意味。ですから,その対となる「accidental」は,確かに言葉としては「偶然の」っていう意味もありますけど,「故意でない」って訳すべきです。「偶然」ってことなら,ガンガン当たってますから。

HolyfieldとかЛомаченкоのバッティングは,故意でした。言葉を替えると「頭突き」っていっちゃってもいいかもしれません。もう,キリンのケンカみたいに,ぶつけに行ってましたもん。

それを,無能な解説者はノー・タッチですよ。見てないの? あんなに明らかに頭ぁぶつけてたら,触れて,もっと断罪すべきでしょうに。あ,Ломаченкоのはちょっと触れてましたけど,もっと厳しく指摘するのが解説者の役割でしょうに。まぁ,役割なんて,そもそも果たしてませんけど…。

考えてみれば,Rigondeauxの完敗は,もしかしたら頭突きがなくても変わらなかったかもしれませんし,「ちょっと」とはいえ頭突きに触れてましたから,600歩くらい譲って「よし」としましょう。

でも,Holyfield-Tyson第2戦の「あれ」は,もっと厳しく指摘すべきでした。もちろんTysonの行為は擁護されるべきではありませんけど,もうちょっと,Holyfieldの「反則だらけ」がとり上げられるべきだったと思います。

算数のテストに喩えるなら,電卓をもち込んじゃってるのにも関わらず,試験官が「何か,機械のボタン叩いてんぞ」くらいな感じ。「電卓」って存在をスルーしちゃってて,それを「試験官」っていえますか?

まぁ,今となってはTysonも「反則ばっかりだったぜ」なんて,いわないとは思いますけどね。でも,あれだけ反則されたら,Tysonじゃなくてもキレますよ。それほどに反則だらけでしたから。

あれだけの「反則だらけ」を触れなかったことに疑問を抱いてたところで,Ломаченко-Rigondeaux戦の「故意のバッティング」再発。で,疑問が解けたわけです。「コイツら,気づいてないんじゃない?」と。

「触れなかった」んじゃなくて,そもそも「気づいてなかった」ようです。つまり,頭ぁ悪すぎるんです。解説者っていう立場なのに,目は「素人以下」のようです。あ,「以下」じゃなくて「未満」ですね。園児レベル。

あれで解説者が務まっちゃってるんですからねぇ…。そして,少なからず,それが信用されちゃってるんですからねぇ…。