グローブいろいろ

大谷翔平選手が移籍するって噂の「エンジェルス」ですけど,「Angels」はカナで書くと「エインジェルズ」みたいになるのが正解。濁らないのが主流なんでしょうか? 明らかに違ってる気がしますし,ケツの「s」の発音なんて,中学1年(今だと小学生)で真っ先に習うことのような気がします。

間違いを推奨するんでしょうか? 謎です。

前回,「期待すんなよ」的なことを書いたところ,その御返答をいただきました。

曰く,「期待してないけど,それにしても…」みたいなことでした。安心しました。

評価しちゃうような失礼な表現になってしまい恐縮ですけど,こういう「賢明な方」って,非常に稀だと思うんですね。もしかすると,ボクシング・ファン歴が長い人ほど,弊WWWサイトは,受け入れ難いかもしれません。だって,「ほぼ全否定」ですからね。

例えば,ビートたけしさんや千原ジュニアさんなんてのは有名なボクシング・ファンですけど,どれだけインチキな情報に踊らされてるか。たけしさんなんて「Pascual Pérez」を「パスカル・ペレス」っていってますが,スペイン語の「cua」は「カ」って読むはずがありません。騙されてます。解説者たちも悪いんでしょうけど,無批判的に「そんなヤツら」の言説を受け入れちゃってんのもダメな気がします。

たけしさんを「ピートたけし」っていったら,たぶん怒るはずですが,そのくらい愚かですからね。

それだけ,解説者や記者が,インチキ情報ばっかりタレ流してる,ってことなんですけどね。あれ,何なんでしょうか?

いつだったか,何の番組だったか,さえ忘れちゃいましたが,ヒロミさんが宅配便全般を「宅急便」っていっちゃってました。でも,放送の字幕では「宅配便」って出てました。

そう,「宅急便」っていうのは,ヤマト運輸のもの「のみ」指します。ですんで,『魔女の宅急便』は,わざわざヤマト運輸の公認をとったそうですね。

他にも,「セロテープ」とか「ウォシュレット」とかいうのも,特定の企業のもの「しか」指しません。拙宅の便器は「ウォシュレット」機能がついてるんですけど,これはTOTO社のヤツなんで「ウォシュレット」でいいんです。でも,他の会社のも含めて「温水洗浄便座」みたいにいうことが多いそうですね。たぶんNHKとかでは,うるさいんでしょう。

ボクシング関連でいうと「ワセリン」ってのが,実はユニリーバ社の商標名なんだそうですね。一般名称は異常なくらい長いんで「ワセリン」が一般化してますが,ホントは正しくないそうですから,もしNHKでボクシング中継がなされて,出血が起こったときには,「ワセリン」って単語を遣わないかもしれません。まぁ,そもそもNHKは中継しないでしょうけど

「細かい」っていわれるかもしれませんが,これ,例えば,コンビニすべてを「ローソン」っていっちゃうくらい暴力的です。いわないでしょ。ちゃんと,店名をいうでしょ。近所の「ファミマ」に行くのに,「ローソン行ってくる」っていうヤツぁいませんよねぇ。

どうやら絆創膏はその傾向が強くて,その名称で出身地域がわかることが多いそうですね。ですんで筆者は,わりと気をつけて「絆創膏」っていいます。田舎モンだったりしますんで。

あ,筆者は若い頃にちょっとだけ楽器を使ってたんで,「エレクトーン」とか「ピアニカ」とかいう言葉にも違和感。この2つは,ともにヤマハのもの「のみ」を指して,例えば「ローランドのエレクトーン」なんていったら,何を指してんのかわかりません。

運よくボクシング用具にはそんなものはない気がしますけど,喩えていうなら,「ウィニンググラント貸して」みたいな感じ。もし,そういわれたら「何だよ,それ?」って思うでしょ。

いや,いいんですけどね。でも,例えばINAXの社員が「うちのウォシュレットの調子が悪くてさぁ…」ってきいて,気分を害さないとは思い難いでしょ。INAXでは「ウォシュレット」っていわないんですから。細かすぎるかもしれませんけど,わかる範囲で,できる範囲で,そこそこの配慮をしたほうがいい気がしてます。

あ,芸能人でもそうですね。例えば,「左利きの黒いヤツ…。アイツだよ,アイツ」で,松崎しげるさんって,わかりますかねぇ…。「黒いヤツ」でわかるかもしれませんけど,「おっさん」の筆者からしたら,若いアイドルなんて見分けがつかなくなってきつつありますから,誰か特定の人を思い浮かべながらも「あの若いネェちゃん」って言葉で,誰かに通じるかどうか…。ヒント,少なすぎでしょ。

そう思いつつテレビ見てたら,「こだわりいっぱいのリフォーム」みたいなナレーション。もう「こだわり」って言葉は,悪い意味ではなくなっちゃったんでしょうね。悪い意味で「こだわり」って言葉を遣うのは,それこそ「おっさん」なんでしょう。

ということで,「スピードスター(speedster)」って言葉が「スピードがあるだけで,あとは無茶苦茶」っていうホントの意味があるのと同様に,「こだわり」ってのも,「それ以外は全然ダメ」っていう古い意味を忘れたほうがよさそうですね。「このお店の『こだわり』は何ですか?」ってのは,「この店,本業はまるでダメだけど,それでも,何か気にしてることはあんの?」っていう古典的な意味ではなく,「この店で特に注意してるところはどこ?」って解釈すべきだと,改心しました。半ば「バカにしてやがんな」って思いつつも,ですけどね。「コイツ,モノを知らねぇなぁ」って思いつつも,ね。

何ごとも,いい方向に忖度すべきなようです。腹ん中では,どう思ってるか,わかりませんけどね。

もちろん,筆者自身も誤用を乱発してることと思ってますよ。だって,「輸入」がホントは「しゅにゅう」って読むことを,今年になってから知ったくらいですから。

ボクシングに話を戻すと,先日のWBO154戦では,Miguel CottoSadam Aliとで,使用したグローブのメーカーが違いましたね。CottoがEverlast社,AliがGrant社のものでした。

そういえば,先のGennady Golovkin(Геннадий Головкин)Saúl Álvarez戦でも違ってましたね。こっそり筆者はÁlvarezを応援してたんですけど,そのÁlvarezはWinning社のものを使ってました。

御存知の方もいるでしょうけど,日本製のWinning社のグローブって,ちょっと効きが甘い気がするんですよね。ですんで,ÁlvarezがWinning社のグローブを着用してんのを見て,悔しかった記憶があります。「それじゃ倒せねぇよぉ…」って。

というように,グローブにはいろいろな使用感があります。筆者は手が小さいんで,古いタイプのメキシコのReyes社の練習用グローブが,緩かったんですね。「メキシカンって,手ぇデカいのか?」って本気で思ったくらい。

ただ,Reyes社のグローブだと,名前を書かなくて済む,っていうメリットがあったりするんですね。しかも緑色のグローブだったんで,余計に「稀度」が高くて,油性ペンで名前を書く必要がありませんでした。

これが,日本製だったりタイ製だったりすると,かなりの高確率で誰かとかぶるんで,名前を書かないといけないんですね。名前くらい,どうってこともないんですけど,ちょっと「オシャレ度」が下がるでしょ。そもそも,オシャレではないんですが…。

以前にも書いたように,日本製のは縫製が丁寧で,頑丈な傾向があります。ですんで,トランクスで見えませんけど,トランクスの下のカップは,かなりの選手が日本製を使ってます。脱がせませんから,確認できないものの,カップとか練習道具は,日本製が好まれます。そのせいで,日本のボクシング記者は,海外の関係者へのインタビューの際にボクシング用品をプレゼントすることが多いとききます。

世界的なトレーナー,例えば,Freddie Roach氏なんかも,ミットは日本製を使ってますね。こういうところにも注目してみてください。ミットやバッグみたいな耐久力を問われるような道具は,わりと日本製ですんで。

ただ,グローブに関していうと,しばしば「パンチャーズ・グローブ(強打者用グローブ)」なんていわれるメキシコ製が好まれたりもするんですけど。

というのも,グローブって,重さが問われるだけなんですね。例えば「8oz」ってのは「226.80g」って規定されてるだけ。あとは,「表面が柔らかい革でできてること」みたいなことが決まってるだけだったりします。

その結果,中身が,馬なんかの動物の毛だったり,フォーム(発泡材)だったり,いろいろなんですね。分解するとわかりますが(そんなに安価じゃありませんけど),日本製はフォームです。わりとクッション性が優れてます。

かつて,このグローブの詰めものを抜いちゃった反則がありました。

今も伝説(悪いほうね)として残ってる,Billy Collins-Luis Resto戦です。

1983年6月16日に行われたこの10回戦は,試合終了直後にはRestoの判定勝ちが宣されて,Collinsに初黒星がつけられたんですが,Collins側が「アイツのパンチ,異常に硬かったぞ」って主張してグローブを検査した結果,Restoのグローブの詰めものがトレーナーによって抜かれてたことが判明。試合も,無効試合に変更になりました。

さらには,どうやらグローブの細工だけではなく,バンデージ(英語では普通,「hand-wrap」っていいます。「包帯」を意味する英単語「bandage」は,いわば日本語です)を石膏か何かで硬めてたんだとか。

写真を見たことがあるんですが,この試合の終了後のCollinsは,両目の目蓋が大きく腫れてました。パンダ状態。気のなる方は,動画があると思われますんで,「Collins」と「Resto」で検索してみてください。

あ,この試合でResto側についてたPanama Lewisトレーナーは,これで資格停止処分を食いましたが,後にSultan Ibragimov(Султан Ибрагимов)をWBOヘビー級王者に育て上げましたね。

日本でも有名なところでは,Alexis ArgüelloとAaron Pryor第1戦でのPryor側のセコンドでした。この試合も曰くつきで,第13ラウンド終了後にPryorが怪しげな黒い瓶の液体を口にした後に,生き返ったように打ちまくって14回目にストップ勝ちした,ってことがありました。

なお,このPryor-Argüello戦のほうが,Lewis氏の資格停止より前です。

Lewis氏はこの不正グローブの件で有罪となって,4年くらい収監されました。

気の毒なのは,Collinsです。

この試合で目をやられちゃって,引退。婚約してたんですけど,それも破談になって,それが関係するのか否かは謎ですが,直後に自動車事故で亡くなっちゃいました。

と,そんな事故がありました。事故なんだか事件なんだか,わかりませんけどね。

そういえば,現行のルールでは国際式で「thumb-attached」っていうグローブが義務づけられてました。すっかり忘れてました。

ちょっと無理に訳すと,「親指縫いつけグローブ」でしょうかね。御存知のようにグローブってのは,いわゆる「ミトン」のように親指部分と,その他の4指の部分に分かれてます。で,「thumb-attached」は,その2つのパートがくっついてるものを示します。

ですんで,試合終了直後に勝利者賞とかでトロフィーなんかを渡されると,手が開かないんで,ちょっと手間どったりしますね。目録なんかも,手が開かないせいで,上手いことサッと握れなかったりします。

で,そんな「thumb-attached」になった今も,わりと多くのメーカーが,グローブの親指の内側部分を色分けしてます。

これはいわゆる「thumbing」っていう反則を防ぐためですね。「thumb」ってのは「親指」で,その進行形が「thumbing」。親指で目を突くことが「thumbing」なんですが,親指の内側が別の色になってると,親指を突き立ててんのがレフェリーに明確になりやすい,っていうメリットがあります。

これをもって,「あ,この選手は親指を突き立ててやがんな!」って判別するわけですね。で,注意,あるいは,警告をします。

と,グローブの話をしたのは,先日の『WOWOWエキサイトマッチ』でも,イギリスの2試合で2試合ともが別々のグローブを着用してたこともあって,です。

どうなんでしょうかねぇ…。国際的な風潮で,選手にグローブの選択権を与えることが多いようですけど,ちょっと不公平になっちゃう気がしてます。打ってみると,「効きそうか否か」っていう違いがあるんですもん。それこそ,上記のように内容物に違いがあることさえ,ありますから。

いいんでしょうか。いいんでしょうけど…。

そのイギリスでの試合では,WBA115戦でKal Yafaiが石田匠選手に遊び勝ちましたが,石田選手,勝つ気,あったんでしょうか?

だって,115としては際立った長身選手でしょ。ってことは,相手が近間を挑んでくることは容易に予想できたでしょうに。でも,ショート,ゼロでした。ほら,容易に予想できたことの対策,ゼロなんですよ。すなわち,勝つ気,ゼロってことになっちゃいませんかね。

例えば,明日,テストだとしましょう。そんなときに,「すべて知ってる問題が出る」って,確信できますか?

たぶん,何日か前から,教師が「ここ,出るからなぁ」みたいにいうこともあるでしょう。でも,それって,全問? 全問「知ってる問題」が出りゃ,そりゃ全部できるでしょうけど,そんなことって,ありますか? たぶん,ないでしょうに。ないから,そこそこ,いろんなお勉強をして臨むんでしょ。当然のことです。「全問,知ってるのしか出ない」って確信なんて,もてるはずがありません。

石田選手がやってたことは,それですよ。そんな「あり得ない想定」で世界戦に臨んで,「あれ」です。悪い言葉を遣うと,「予想されることさえしなかった結果が,『あのザマ』」でしょうに。同情の余地はどこにもありません。「知ってる問題」だけが出ることを期待した結果ですから。プロなら,いや,プロじゃなくても,「やること,やれよ」でしょうに。予想された赤点を,予想通り,とっちゃった「だけ」ですもん。解説者,そこまでいっちゃえよ,って,思います。ヤマ張りすぎですし,そもそも,そのヤマも存分に自分だけに都合のいい想定ですし。

あの試合の場合には,十分すぎるくらい予想できた展開でしたからね。簡単に予想のつく展開を見据えてなかった,って,何でしょうか? バカすぎるでしょ。「おーい,ここ出るぞ!」すらやらない,って,理解できますかねぇ…。「ここ出るぞ」周辺をお勉強せずに本番に挑む行為,考えられますか?

それから,メインですが,これ,敗れたCarlos Takam,実は左利きなんじゃないか,って思ってます。

友達でも何でもないんで確認できないんですが,試合前のポーズは,何度か,左手でとってたんですね。

試合では右目の上をカットしたんで,右手で顔を拭うことが多かったんですが,左利きなんじゃないかなぁ…,って,見てました。

実際,左利きでも右で構える選手って,いるんですよね。有名なところではODLH(Óscar De La Hoya)がそうでした。もちろん逆に,右利きでも左に構える選手もいます(たぶんVasyl Lomachenko(Василь Ломаченко)が右利きです)

ナイツさんの『ちゃきちゃき大放送』でも,TBS出水麻衣アナが「実は左利きで,親に矯正させられた」って告白してましたね。そういうケース,わりと少なくないようです。

あ,ナイツの塙さんの兄のはなわさんが左利きで,ネタにしてますね。そのせいで,ハサミが使い難くてしょうがない,みたいなことをいってました。

知り合いの散髪屋さんに訊いたところ,左利き用の散髪鋏がないこともないようですが,「散髪くらいは」ってことで,散髪の際にのみ右手を使う「ホントは左利き」の人も多いんだそうです。左利きは,何かと苦労するようですね。

ボクシングに話を戻すと,ボクシングでの「ホントは左利きの右構え」っていうのには,練習体系が強く影響してると筆者は考えてます。

日本では整列して鏡を前にして練習することが多いんですけど,海外の場合,練習生が背中合わせに何人かで円をつくって,指導者がそれを回りながらミットを受ける,ってことを,初歩の段階でやりがちなんですね。

すると,指導者は例えば,左手にミットを構えて,左に回りながら(これ「右回り」ですからね)練習生にジャブを1発ずつ打たせる,ってなことをやります。打たせて,回って,また打たせる,って感じ。

すると,全員が同じ右構えであることが望ましいんですね。そうすれば,指導者はイチイチ動作を変えずに済みますから。そのせいで海外では,ホントは左利きなのに右構えをとる選手が少なくありません。

Takamも,そんな感じな気がしました。繰り返しになりますけど,確認する手立てはありません

と,放送で2選手が違うグローブをしてんのを見て,そんなことを考えてました。このくらいのことを,解説者,喋れよ,おい。カネとって喋ってんだからさぁ…。