タイ式についてのいろいろ

やっとですか,『WOWOWエキサイトマッチ』の採点法紹介で,「有効なクリーン・ヒットは相手に与えたダメージで評価します」旨のことをいわなくなりましたね。これが正解。っていうか,今までわかんなかったんでしょうか?

まぁ,知ったフリして喋ってるジョー小泉氏がそういっちゃってましたから,それに無批判的につられちゃってたんでしょうね。バカはバカに引っ張られます。そもそも,採点の観点を完全に誤解してる人間が,偉そうに採点を発表しちゃってることが謎でしょうに。何やってんだか,って感じ。

例えば,ボクサーの能力を,ゲームのようにパラメータで設定するとしましょう。10点満点として,「打たれ強さ」っていう項目が,当然,あるはずです。だとしたら,異常なくらい頑丈な「打たれ強さ:10」って人もいれば,触った程度でも倒れちゃうような「打たれ強さ:0」って選手がいてもいいはず。代わりに,「スピード:10」にしちゃう,とか,ね。あ,パラメータ,どんなのがあるか,考えてませんからね。

こうして,人によって頑丈さに差異がある,ってことは,「有効なクリーン・ヒット」ってのを「ダメージ」では評価できない,ってことを意味します。だって,同じパンチが当たっても,人によってダメージが異なるわけですから。

あの横分けオヤジは,さんざん,いろんな選手と接してきたクセに,そんなこともわかってなかったんでしょうかね? 頭ぁ悪すぎるでしょうに。やっと正されたついでに,説明責任があるように思います。「今までずっと,まるでわかってませんでした」って詫てもいいくらいです。武士だったら,…。

ということで,今回のお題は「タイ式」。人によっては「ムエタイ」っていうヤツですけど,通というか,そこそこ古い人間は「タイ式」っていいます。あ,筆者も「古い人間」ってことですね。

「ムエタイ」ってカタカナで書くヤツをタイ語で「มวยไทย」って書きます。

この,後半の「ไทย」は,あの国「タイ」っていう意味。一方,前半の「มวย」は「boxing」って意味ですね。

ですんで,「มวยไทย」はいわば「タイ式ボクシング」って意味ですから,これをそのまま「タイ式」っていうことがあります。

というのも,一般的な手だけのボクシングのことを「มวยสากล」っていいます。カナで書くと「ムエサコン」。そう,ここ「むえ左近」は,まさにこれです。これを,バカっぽく表記しました。

では「สากล」は,ってぇと,これは「国際式」とか「西洋式」とかいう意味ですんで,手だけのボクシングを「国際式」,「ムエタイ」って呼ばれるヤツを「タイ式」って呼ぶことがあります。もし通ぶりたかったら,この語をお遣いください。通じゃなくても,かつての日本のキックの全盛期を知ってるような50歳以上くらいの人たちは,「国際式」って単語を遣うかもしれません。

逆にいうと,あの競技を「ムエタイ」っていっちゃう人は,「最近の人」っていっちゃってもいいかもしれません。非常に悪くいうと「にわか」かもしれません

で,この「ムエタイ(あ,バカにしてる)」や「キック・ボクシング」を,最近はわりと趣味っぽくやる人が増えてますけど,こんなことやっても,痩せませんからね。

理由はわりと簡単で,バッグを蹴る,ミットを蹴る,っていう動作は,「無酸素運動」だからです。非常に簡単にいうと,蹴る瞬間に息を吐いたり止めたりして「フンッ」とやるでしょ。これが「無酸素運動」なんですね。

この「無酸素運動」は,直近の食べものとかがエネルギーになって,脂肪を燃焼させません。脂肪をエネルギーにするのが「有酸素運動」ってヤツで,運動の強度でいうと,雑談しながらできる程度の運動なんです。

しばしば,サッカーの選手が談笑しながらダラダラ走りますけど,あれが「有酸素運動」。サッカーの選手の体脂肪率が低いのは,ああいう「有酸素運動」をアップとしてやってるからで,「無酸素運動」は,疲労っていう充実感はあるものの,絞られるのは脂肪よりも水分なんです。

ですんで,ボクサーは試合直前にそういう「無酸素運動」をすることによって体の水分を絞って,体重を無理矢理に落とします。肌,カラッカラです。人によってはシャワーも浴びられません。シャワーを浴びると,皮膚がシャワーの水分を吸っちゃって,重くなるんです。ギリギリの選手ってのは,そんなもんですから,マネしないでください。

そんなことやって,水分を絞って計量に臨むんですから,不健康ですよ。計量の数日前から食事ゼロになったり,そうやって体の水分を絞ったり,ガム噛んでツバを吐いたりして計量。あ,今は「サウナ」っていう汗出し手段もありますね。繰り返しますけど,不健康ですから,マネしないように。

あ,趣味的にやってる人の話でしたね。

こういう人たち,しばしば,足の甲で蹴っちゃいますから,そこで「あ,素人」って判断できることがあります。

サッカー・ボールを蹴るときって,足の甲で蹴りますね。これは,ボールが軟らかいからできることなんです。人間って硬いんで,足の甲で蹴ると,確実に足の甲が負けますから,スネや足首で蹴るんですね。で,これをヒザやスネでブロックします。

当然,そりゃ痛いもんです。スネですから。ですんで,「タイ式」やキックの選手は,ほぼ確実に泣きながら試合してます。涙目です。だって,痛いんですもん。

顔にワセリン(これはユニリーバの商標名で,一般的には「石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したもの」っていわなきゃいけないのかも)や,「タイ・オイル(น้ำมันมวย)」って呼ばれる油を塗ってますんで,わかり難いかもしれませんけど,実際は涙目です。半泣きです

あ,今,「キック」って書きましたけど,「キック」っていうのは「キック・ボクシング」っていう競技「のみ」を表して,蹴る動作は決して「キック」とはいいません。ここも,言葉ぁ悪くなりますが「素人」を見分ける部分かもしれませんね。「蹴る」っていう動作を指して「キック」っていっちゃってたら,その人物は確実に「素人」か,「キック・ボクシング」っていう競技を無視してる人,って,決めつけちゃってください。

また,「タイ式」っていうのは判定基準が独特で,高い蹴りを高く評価する傾向があります。逆に,ロー(脚部を狙う蹴り)やパンチは,「ほぼ無視」です。

ところが,ローやパンチのほうがKOを狙いやすかったりするんですね。逆に,ミドル(腹部を狙う蹴り)やハイ(頭部を狙う蹴り)ってのは,「ほぼクリーン・ヒットなし」なんです。ですんで,相手にダメージを与えたきゃローやパンチを多用すべきなんでしょうけど,こうした武器は採点に加味されませんから,日本や欧米の選手がタイで判定になっちゃった場合に,判定を聞くまでもなくリングを降りちゃうことが少なくありません。勝ち目ゼロですから。

とはいえ,パンチやローを狙う選手が皆無ってわけでもないんですけど,こうした武器で倒して勝ったとしても,タイでは「まぐれ」扱いになることがあります。判定になると勝ち目はまったくないものの,倒して勝つ「可能性」がありますんで,タイ人でも多用する選手がいないわけでもないんですけど,タイでは「そんなこと」扱い。ちょっと極端にいうと「判定で勝ってこそ」って感じですんで,高い蹴りを多用する選手が多くなります。

そういえば,タイで王座に就いた日本人選手がいましたけど,あれ,KOだったでしょ? ですんで,…,ってことです。ほぼまったく評価されてなかったりします。

それから,タイって国は,弱いクセにサッカーが異常なほどに人気で,ちょっと体がデカいと,サッカーに行く傾向が強いんですね。ですんで,「タイ式」は,わりと小さい選手が多くなります。

実際,今はどうか不明ですが,2000年以前くらいまでは,ランキングがあったのは140くらいまで。それを超える,まぁ,60kg台後半になると,ランキング選手10人が集まらなかったりしました。

ってことは,「デカい階級」,かつ,「KO奪取」の選手は,…,ってことです。いや,ちゃんとはいいませんけどね。

これまた名前は伏せますけど,タイ人で非常に人気のあった7階級(だったかな?)王者は,130勝くらいしてましたけど,KO数は1ケタだったような記憶があります。笑うくらいの人気選手でした。

そのタイ人がカナダだかアメリカに行ったときのこと。「タイ式」にはヒジやヒザがあるんですけど,北米のテレビの放送コードには,「骨と骨が当たるのはアウト」って決まりがあったらしく,「ヒジ全面禁止」ってことで行ったそうなんです。

が,試合直前のルール会議で「ヒザも禁止」ってことになったそうです。

そのタイ人はヒザ蹴りを多用する選手だったんで,戦力はガタ落ちダチョウ倶楽部さんなら確実に「聞いてないよぉ~」っていったはずですけど,そのタイ人,「しょーがない。面倒臭ぇや」ってことで,サウスポー・スタイルからの左ミドルを強めに振って,相手のカナダ人だかアメリカ人だかの,腕とアバラを折ってKO勝ちしたんだとか…。

「面倒臭ぇ」で折られちゃうんですから,どうしたもんでしょうかね。

次。

これは以前にも書いたことですけど,「タイ式」でギャンブルができることは知られてますが,「胴元」的なものはありません。ですんで,日本の競馬でいう「勝馬投票券」を買うようなところを探しても,見つかりません。ないんですから,見つかるはずがありません。

というのも,タイって国は,ギャンブル全面禁止なんですね。あ,日本のパチンコも,誰もがライターの石みたいなので換金できることを知ってても,あれは「換金」ではなくて「取引」みたいな扱いになって,つまりは「カネは賭けてない」ってことなんだそうです。タイにおける「タイ式」も,誰もがギャンブルだって知ってても,表向き,ギャンブルではありません。

ですんで,客席で「オレ,赤の選手に500バーツ!」っていう人を見つけて,青の選手に賭けるんです。あくまで,個人間のやりとりですから,ギャンブルには相当しない,ってことになってます。こうして個人間で交渉が成立した場合に,ようやく,ギャンブル成立になります。あ,「ギャンブル」っていっちゃいけないのか…。

そんなことですから,わりとタイ語が流暢じゃないと,オススメできかねます。あ,でも,タイの貨幣価値を考えると,日本人からすれば「やり放題」かもしれませんねぇ…。「爆買い」がいろいろと非難されてますけど,タイに行くと日本人はほぼ確実に「爆買い」できます。

ちなみに某選手(日本人)は,タイに行くときに,タイに知り合いがいる,ってんで,ポケットに600円程度しかもたずに行ったそうなんですね。暑い国なんで,Tシャツ姿で,特に荷物もなく,小銭600円。怪しすぎます。近所のコンビニに行くくらいの格好で,海外ですからねぇ…。

まさにその通りで,成田空港で別室に連れて行かれたそうです。そして尋問。「なんで所持金600円しかないんだ?」と。「荷物もなくて,Tシャツ姿で,どういうつもりなんだ?」と。いろいろ説明して,飛行機には間に合ったそうですが,そんなことが複数回,あったそうです。

次。

2700,あ,今は「ザ・ツネハッチャン」って改名したんでしたっけ? そのツネさんが「右ヒジ,左ヒジ…」ってやってましたけど,ああしてヒジを水平に振っても,ほぼ確実にブロックされちゃいますんで,ヒジ打ちは打ち下ろす必要があります。で,ヒジ打ちの狙いはダメージではなく,カットです。

ボクシングでも頭がぶつかってカットが起こることがありますが,硬いところがぶつかると,切れることがあるんですね。ですんで,ヒジはダメージ目的ではなく,額や目蓋をカットする目的で振り下ろします。

どうやら,かつて「タイ式」は「血を流させたら勝ち」っていうルールもあったらしく,その名残りで,「カット狙い」っていうのがあるんだそうです。ですんで,カットが起きると,日本人の感覚だと「止血できそう」って思える傷でも,早めにストップがかかることがあります。

この傾向は「国際式」にもあって,わりと早いストップがあり得ます。これは決してホームタウン・デシジョンではなくて,タイ人が切れても,早めに止められます

というように,ヒジ打ちは決してダメージ目的ではないんですが,ちょっとこれは感覚的な話で恐縮ですけど,「ちょっとしたクッション」があったほうが,ノウへのダメージはデカくなるんですね。

こんな実験をしてみてください以前に書いたことの繰り返しです)

まず素手で,アゴをコツンしてみましょう。続いて,厚さ3~5cmくらいの辞典や電話帳(今どきか?)をアゴに当てて,その上をコツンしてみましょう。

すると,辞典を挟んで「ちょっとしたクッション」があるほうが,「ゴワ~ン感」強くありませんかね?

というように,硬い武器はカットこそ起こりやすくなるものの,脳へのダメージはそんなにないような気がしてます。

かつて115以下ではありだった「6oz」っていうグローブが廃止されて,最小でも「8oz」になりましたけど,感覚的には,この「8oz」くらいが最も「ゴワ~ン感」があるように思います。つまり,脳へのダメージが最もデカいように思います。

ってことで,どうやら安全性を考慮して「6oz」を廃止したようですけど,筆者の感覚としては,「より危険になった」気がしてます。あくまで感覚的な話ですが,そんな気がしてます。

と,まぁ,「タイ式」には,少なからず知られてない面がありますんで,御興味ある方は,御質問をお送りください。