ちょっとギャラ事情を…

Román González「もう終わった」説が出てましたね。1987年6月17日が誕生日ですから,30歳ですか。連敗,しかも,かなりキツめのKO負けとあっては,そういう声が上がるのも仕方がないのかもしれませんね。

ギャラを探してみたところ,こんな結果となりました。それぞれ,1ドル108.4円として円も提示します。

これを見る限りでは,井上選手のギャラは2000万円きってますね。ある元世界王者に訊いたところ,日本での日本人世界王者のギャラは2000~3000万円が「ザラ」とのことですんで,上記の通りだとすると,井上選手は日本でやるよりも安価です。

まぁ,世界的に名を売ることが主目的だったようですし,日本への生中継の歩合なんかもありますから,いろいろ含めるとギャラは2000万円を超えるでしょう。

で,こんなリストを入手しました。

出典が謎なんですが,「各国の平均月収」っていうネタです。

これによれば,1位はバミューダの$ 4,574.19。面倒なんで,1ドルを100円とすると,45万円ちょい,ということになります。

で,アメリカは7位で$ 2,897.98ですから,30万円弱。

そして日本は14位で$ 2,419.46ですんで,25万円弱。

わりと馴染みの国でいうと,メキシコが77位で$ 488.10,タイが85位で$ 418.47,フィリピンが99位で$ 314.30となってます。

ということで,割合でいうとメキシコが日本の20%,タイが17%,フィリピン13%となりますかね。異常なまでに低い水準です。

いつ,どこで見たのか失念しちゃったんですけど,かつての軽量級のスター選手だったメキシコのRicardo Lópezが「1 million dollars」っていうギャラを夢見てた,って発言してましたから,Lópezのアメリカでのギャラは1億円に遠く及ばないことになります。世界的に,軽量級って,「そんなもん」なんですね。あ,日本は例外ですよ。

話をタイに移すと,タイのリングで高額を得た,っていう選手の1試合のギャラが数万円ほどでした。国内王者クラスでも,日本円で10万円には届かないケースが多いそうです。

とはいっても,タイの平均月収は日本の17%程度ですから,日本円で10万円だとしても,大金もち気分になりますね。

日本人の感覚では「ギャラ10万円」なんて「はした金」ですが,タイ人,フィリピン人,メキシコ人にとっては,かなりの大金です。

以前にも書きましたけど,試合のギャラは契約時に決まってて,試合の結果には左右されませんから,平均月収4万円くらいの人たちに「10万円」っていう額を提示したら…。さて,どうでしょうか。

タイの選手は「無気力試合が多い」みたいなことをいわれますけど,平均月収4万円の国の人に「10万円」ですよ。日本に換算すると,平均月収は25万円ですから,「1試合,60万円でどぉ?」ってことになります。ね,考えちゃうでしょ?

さらにこれが世界戦ともなれば10万円ってことは考えられませんから,「勝てば次がある」ってわかってたとしても,高額のギャラを提示されて,心が動かないほうが難しそうです。

って具合に,日本の相場は他のアジア諸国と比べると,ホントに「ケタが違う」ことになってますから,強い意志が必要になりそうです。

といった,ちょっと汚い話はここで終わり。

ちょっとまだ微妙ではあるんですけど,Román Gonzálezって,体が硬いような気がしてます。「気がしてます」程度で,確定ではないんですけどね。あ,村田諒太選手とか清水聡選手の体が硬いことは確定。以前にも書いたように,体が硬いと,それが巧く作用した場合には「パンチの硬さ」として効果的になるんですけど,他方で,哀しいほどの「打たれ脆さ」につながりがちなんですね。

若くて体にパワーがあるうちは,弾かれつつも馬力で耐えることができるものの,ある程度の年齢になると,体の硬さゆえに「コテッ」と倒れることになるんです。かつてのODLH(Óscar De La Hoya)がその典型例で,音がするくらいに硬いパンチを打てた反面,彼は異常なほどに防御にナーバスで,それこそ「1発ももらわない」ようにしてました。食ったら食ったで,コテッと行くからです。

Bernard Hopkins戦では倒されましたが,あれ,見た感じ,そんなに強いパンチじゃなかったでしょ? でも,倒れましたね。あれが体の硬い選手の悪い特徴で,「何だか知らないけど倒されちゃう」ことがあるんですね。

そんな感じを,Chocolatito(Román González)に感じてます。

現時点ではわかりませんが,もしChocolatitoが今後も115以上で闘い続けるとなると,「コテッ」が繰り返されちゃうように思うんですね。硬質のパンチで,そんなに強く振らなくても「カツーン,カツーン」と当ててたコンボがそれほど通用しなくなっちゃって,食ったときの「コテッ」が目立っちゃうんじゃないか,と。年齢的にはまだパワー負けという感じではないように思うものの,階級次第という感じがします。

先の115戦も,見た感じ「ぽっちゃり」だったでしょ? いや,「ぽっちゃり」を超えてるかもしれません。あれで「職業は何でしょうか?」って問題を出されて,「ボクサー」って答えがどれだけ出るか,疑問です。それくらいに「ぽっちゃり」でしたから,階級を落とさない限り,「コテッ」が繰り返されちゃうように思ってます。元「トップ選手」なだけに,「いい踏み台」になっちゃうんじゃないか,っていう危惧があります。

次。

井上選手ですが,まぁ,快勝でしたけど,これまた「ショート」は「ゼロ」だったでしょ。「やらない」んじゃなくて「できない」んじゃないか,っていう気がします。

あ,快勝でしたよ。圧勝でしたよ。でも,近くになると,何もできない「もどかしさ」がありました。

ロングでは確かにいい強打を出します。が,その力の源が,「体のぶつけ」でしょ。踏み込みの力強さがあるから,あれだけの強打を打ってますが,もし近づいて打ち合いになって,その力強い踏み込みを使えなくなったら,その強打がなくなっちゃう気がしてます。

そこそこ近間になっても,師匠である大橋秀行選手仕込みのいい左の腹打ちこそ打つものの,「それだけ」。左フックの長さ合わせは非常に雑ですし,軸を右に傾けての右アッパーも打てません。勢いを活かせないと,その強打は放てないようです。

現場ではともかく,もし後日の解説とか論評とかで,「あれ」を絶賛してたら,それこそ「和式」でしょうね。あれは絶賛してはいけません。いってみれば「ロング専用」ですから。ショートはありません。

まだ若いんですから,今のうちに,そこに気づくべきです。が,なにぶん,日本にいて日本の指導者についてたら,可能性は「ゼロ」なんでしょうね。「いいよ,このまま行ってみよう」なんでしょう。見え見えの課題があるのに。若いのに,ねぇ…。

この日,同じリングに立ったJuan Francisco Estradaとやることも,考えられます。でも,Estradaはそこそこ体がデカい上に,近間も巧み。ですから,もしやったら,ズルズルズルズルといって,「あれ? 何が当たった?」ってな展開でコテンと倒されちゃいそうな気がします。Estradaはショート・パンチも打てますから。

Estradaと距離を置いてのスピード合戦,強打合戦をしたら,井上選手が勝つでしょう。でも,Estradaは巧者ですから,そんな闘いにつき合うかどうか…。わりと早めに,「お,コイツ,ショートできねぇんじゃん」って気づいたら,そこからはわりと早いかもしれません。

あれを絶賛しちゃ,いけませんよ。まぁ,「和式」は,絶賛なんでしょうけどね。「6の段」の存在すら知りませんから。「小2」の1学期ですからね。

小柄なWBC王者は狙い目かもしれませんけど,狡猾なEstradaは避けたほうがいいでしょう。Estradaでなくとも,近間の巧い選手,あるいは,小柄で馬力のある選手とはやらないほうが適切です。「何が当たったの?」って感じで,ショートを食っちゃいそうですから。