左構えにスイッチする理由

とうとう,いっちゃいましたね。あの無知すぎる発言。呆れると同時に,一般の認識はそんなもんなんだろう,と,いい換えると,見事なまでに「洗脳」が行き届いてるんだろうなぁ,と,思ったわけです。

それは,『WOWOWエキサイトマッチ』における,浜田剛史氏の「強打者の宿命ですねぇ」という発言。

曰く,強打者は拳を傷めがち,ということだったんですけど,これ,以前にも書いたように,違いますからね。額とか側頭部みたいな硬いところを叩いてしまった「悪い証拠」です。だから,ゲストの井上尚弥選手のコメントは,歯切れが悪かったでしょ?

たぶん,井上選手は「やっちまった」意識があったんでしょう。「硬いとこを叩いちゃったから壊した」,つまりは,「自分の責任」という意識があったんでしょうね。それが,正しい認識です。

それを浜田氏は恥ずかしげもなく,「強打者の宿命」っていっちゃってました。何をいってんだか…。あれだけ「どこでも構わずに」強く速く打ちまくれば,そりゃ,相手の頭を叩いて拳を壊します,って。あれは「強打者の宿命」じゃなくて,恥ずべきことなんです。

世界戦では各ラウンドに必ず点差をつけなきゃいけないと思ってるようですし,相手に与えたダメージでパンチの効果を評価しちゃってるようですし,あれほど何も知らないというか,知らないんじゃなくて「間違った」解説をしてる人が,視聴者を「洗脳」し続けちゃっていいものなんでしょうかねぇ?

解説者の無知っていえば,飯田覚士氏も,左に動くことを「左回り」っていっちゃってます。サウスポーを相手にする右構えは「左に回れ」っていう,たぶん誤ったセオリーを熱弁するときの誤りがこれ。左前に動くから「左回り」って思っちゃってるようですけど,この時計回りは,「右回り」です。

英語では,左に回ることを「時計回り」を意味する「Clockwise」っていって,「左右」っていう表現を通常は使いません。ですから,きっと誤り難いものと想像されます。

勘違いは飯田氏に限ったことではなく,昨年だったかの『探偵! ナイトスクープ』のトランプの周り順で扱われてましたから,誤りが普及しちゃってるものと思われます。

ですから,こうして確認しましょう。親指の向きです。

右手で「グー」をつくって見たときの,親指の向きが「右回り」です。ほら,時計回りでしょ。右手だから「右回り」。当然,逆が「左回り」です。

この勘違いが痛くて,例えば試合中のラウンド間に「いいか,『左回り』するんだぞ!」ってキツめにいわれたとします。そして,選手がその「左回り」を正確に認識して,右に動き続けたとします。で,そのラウンド終了後にコーナーに帰りますね。

なぜか,指示を与えた飯田会長は怒るわけですよ。「『左回り』っていっただろ!」と。

いやいや,選手は正しく「左回り」をしたはず。選手にしてみれば,「お前が間違ってんだろ!」って感じでしょうけど,和式の上下関係の中で,そんなことがいえるはずもなく。で,もし,こっぴどく倒されちゃったとして,どうしたらいいんでしょうか?

選手は「指示に従って…」ってことかもしれません。間違ってる飯田会長にしてみれば,「指示を無視しやがって…」って思うかもしれません。いやいや,お前が間違ってんだろ,ってのにね。

ボクサーとしては大卒っていう高学歴の飯田氏が「あれ」ですから,どうしたもんでしょうか。「たいがいにしろよ」レベルです。

実は筆者も,似たシーンを目撃したことがあります。

ある会長さんがラウンド間に指示して,選手は,それをやると疲れるってわかってたにも関わらず,ちゃんとその指示に従いました。

ところが,そのラウンド終了後に,選手は会長さんに怒鳴られたそうです。「お前,オレの指示が聞けないのか!」って。

会長の指示は,違っていました。それは,会長側の誤りでした。

でも,選手はどこかで「おかしい」と思いつつも,その「誤り」に従ってたら,実は,会長の意図は異なってました。

その試合は,その選手が倒して勝ったからよかったものの,その選手は以降,会長さんの指示に従うことをやめたそうです。

そうそう,その会長さん曰く,「あれはフェイントだったんだよ」って。味方「のみ」を騙して,何が「フェイント」なんだかは不明です。

新年度ってことで,『WOWOWエキサイトマッチ』も解説陣が総登場でしたけど,あそこの「元選手」って,3人ともサウスポーだったんですよね。

これが,わりと大問題です。

右構えの選手がたまにサウスポーにスイッチすることがありますけど,あれは距離とか相性とかの問題ではなく,「腹が効いちゃった」っていうケースが,わりと多いんですね。

サウスポーになると,体の右側が前に出ますね。すると,体の右側にある肝臓は相手に近くなって,相手がそこを打つ際に,「腕の振り」が使い難くなります。

つまりそれは,「強い腹打ち」が打ち難くなることを意味します。

以前に書いたように,腹打ちは即効性があります。が,それは肝臓に限られるんですね。腹の右側です。

ですから,右構えでいると,肝臓を強打されがち,なんですね。ちょっとRGさん風ですけど,肝臓を強打されがちなんです。

ところが,サウスポーになって右腹を相手に近づけると,相手が肝臓を強く打つことが困難になるんですね。これがサウスポーになる理由です。

ですから,よく御覧になると,強めの腹打ちを食っちゃった後にサウスポーに構えを変える選手が多いことに気づくはず。解説者3人ともがサウスポーだと,こういうことが「少しも」わかんないようです。

間違いが多かったり間違いばっかりだったり,認識が足りなすぎたり,と…。これで視聴者に教育ができるんでしょうかね。

あの次元の解説者ばかりだと,番組を見てたり,専門誌を買って読んじゃってる層のほうが,勘違い度が高いかもしれません。

「子どもに見せちゃいけない番組」指定かもしれません。