最悪ですよね,『WOWOWエキサイトマッチ』。新年度になって,ようやくFloyd Mayweather, Jr.の「Speed Star」っていう間違いがなくなったかと思いきや,あの横分けジョー小泉氏が「パンチの効果はダメージで見ます」って断言しちゃってました。最悪です。間違いです。この番組って,わりとマニア層が見る番組でしょ? なのに,あのザマ。何なんでしょうか。以前からいってるように,バカが拡大再生産されます。バカが蔓延します。あの無知,意図的か否かはわかりませんけど,犯罪的行為としか思えません。
あれだけ無駄にキャリア長いクセに,人にはそれぞれ個別の「打たれ強さ・打たれ脆さ」っていうのがある,ってことを,少しも理解してないんでしょうか? 誰もが同じ頑丈さのはずがないでしょうに。ダメージでポイントはつきません。以前にも書いた例を,また挙げましょう。
異常なくらいに頑丈な選手に,音が聞こえるような強打が当たったとします。でも,その選手はまるでノー・ダメージかのように,ケロッとしてます。見た感じに効いた様子は微塵も感じられません。
一方,打たれ脆いことで知られる選手に,大して強くはないパンチが当たって,効いた様子こそないものの,「もしかしたら…」って見えたとします。パンチは軽かったように見えたんですよ。
さて,どっちにポイントが振られるでしょうか。答えは,前者です。ダメージに関係なく,パンチの強さを評価するからです。そこに「忖度」はありません。
もしかすると,村田諒太選手の圧勝と見た人たちは,「これは効いた『はず』」っていう余計な「忖度」があったのかもしれません。でも,あれだけの手打ちパンチは当たっても,初見だったら,「手打ちだしなぁ…」って見る気がしませんかね?
評価するのはダメージ,さらにいえば,「忖度したダメージ」ではありません。「見た目」の「パンチの強さ」です。見た目で効いちゃったのが明らかだったら話は別ですけど,そうでなければ,ダメージなんて,「少しも」加味しません。「効いたはず」は,あり得ません。
あれだけ長くボクシングを見てて,指導者もやってた人間が,あのザマですよ…。何なんでしょうか。
かくいう筆者も,大昔は小泉氏のファンでした。小泉氏のいう「科学」に賛同してました。
でも,いろいろと知ったり読んだりしていくうちに,あのオヤジの言説の怪しさばかりが見えてきました。
例えば,あのオヤジ,脇の筋肉が発達した選手を評して,「脇の筋肉が発達しすぎると,脇を締めにくくなります」ってなことを,いってたか書いてたかしたんですね。でも,考えてみてください。ボクサーって,いわば「猫背」ですよ。体側に腕を下ろしてませんよ。脇にどれほど筋肉がついても,腕の位置は,それよりも前でしょ? 脇に筋肉なんて,無関係です。そんな姿勢のいい選手なんて,いません,って。背筋のピンとした選手なんて,いないでしょうに。
また,スペイン語も,初級学習者でさえ,ウソが見え見え。例えば,アルゼンチン最初の世界王者であるPascual Pérezは「cua」ですから,「クア」なんですね。これがもし「Pasqual」だったら「パスカル」もわからなくはないんですけど,「cual」は「カル」とは読み得ません。「Alexis Argüello」を「アルゲリョ」っていっちゃうのもそうですけど,スペイン語の初歩の初歩,習い始めるとすると,真っ先に習うところで間違ってますから,話になりません。「ゐ」を「る」って読んじゃうくらいにバカすぎる行為です。
それでいて,マニア層と喋ると「パスカル・ペレスは強かったねぇ」なんていいます。ほら,間違いが蔓延してるでしょ。バカの拡大再生産が起こってるでしょ。
スタンスが広い選手のことを「重心を落とす」っていっちゃったり,腹打ちは持久力を削るっていっちゃったり,バカが過ぎますよね。誰かがどこかで正すんならともかく,あの番組,「そんなの」ばっかりですもんねぇ…。スタッフさんにたちにも希望はもてなさそうですし…。大卒なのにね…。「大卒」ってのは,あ,いい替えましょうか,テレビ局のスタッフは,頭のおかしな人ばっかりなのかもしれません。
で,話を『WOWOWエキサイトマッチ』に戻すと,Zolani Tete,見てるだけで怖い選手でしたね。そのポイントは,左腕でした(無能な解説者はノー・タッチ。なんであれに気づかないんでしょうか? 目ぇ開いてましたかねぇ?)。
この日の放送にいなかった「アニキ」が,「手を下げると打ちやすいんですが…」っていいますけど,あれは正しくないんですね。たぶん,自身がマジメに高く構えてたことの「嫉妬」でしょう。科学的,技術的な根拠はありません。「いいから,やれよ!」の世界です。時と場所によっては「パワハラ」認定でしょう。
だって,かつて大活躍したRicardo Lópezなんて,異常なくらいにガード高かったでしょ? で,手数,少ない選手でしたか? 多かったでしょ。ガードの高さと打ちやすさには,相関関係はまったくありません。「まったく」です。
あ,最近の選手でいうとRomán Gonzálezも,わりと高く構える選手ですけど,手数が少ないわけではありません(しつこいようですが,「Román」は「ローマン」なんて読むはずがありません)。
ポイントは,前腕の向きなんですね。前述のTeteはサウスポーの長身選手でしたけど,左手が,つねに相手に向いてたでしょ。左手のヒジから拳にかけての線の延長に,相手のアゴがありました。銃でいうと,銃口が向いてる状態。「あとは引き金を引くだけ」状態でした。
Wladimir Klitschkoの右にもそんなところがあって,右手の前腕が標的に向かってるんですね。ですから,それこそ相手にしてみれば「いつ飛んで来るのか,わかんない」って感じに怖いんです。それでも打ってったAnthony Joshuaの勇気には,単純に敬服します。
そんな怖さが,Teteにありました。
重ねていいますと,これがポイントなんですね。前腕(ヒジから拳にかけて描いた線)の向きがポイントなんです。ガードの高さではないんです。
またLópezの話に戻ります。
Lópezはコメカミほどまで拳を挙げてましたが,これだと左前腕は相手のアゴを向きません。このままヒジを伸ばすと,上のほうにしか左パンチは飛んでいきませんね。
鬼塚勝也選手が初めての世界戦の際に,目蓋をカットしたせいもあって左拳を異常なほど高く構えてましたが,ここからのジャブが,「チョップ」みたいになってました。高く構えた左手で,叩き下ろす感じ,っていえばわかりますかね? あれは「パンチ」ではありません。厳しい審判だったら,反則をとっちゃうくらいの「チョップ」でした。
ではLópezはどうしたか…? Lópezは,瞬間的に前傾してました。
左拳をコメカミまで挙げておきましょう。で,その構えのまま,前傾してください。すると,左前腕の向きが下がりますね。これなんです,これ。
Lópezはジャブで飛び込む直前に,ちょいと前傾したんですね。それによって,左前腕を相手のアゴに向けてました。すると前腕は,そのまま伸ばせばアゴに突き刺さることになります。さらには「チョップ」でもなくなります。Lópezが左をきれいに伸ばせてたのには,この工夫がありました。あ,本人が意識してたか否かは不明ですけどね。
何かのインタビューで,キャリアの晩年は特に両ヒザを激しく痛めてた,みたいなことをいってた記憶がありますけど,あれだけ頻繁にヒザを使って上体を折ってたら,そりゃ,痛めても不思議ではありません。
ガードを下げて構えたところで,左前腕は相手に向きませんから,「左手を下げるとジャブが伸ばしやすい」っていう言説が,いかにインチキか,おわかりいただけるんじゃないでしょうか。でも,かつてのThomas Hearnsみたいに左手を下げてジャブを突き刺してた選手がいましたけど,あれにはあれで,秘密がありました。
左手を下げてブラブラさせましょう。で,その左手がわりと外側にブラリと行ったときに,止まってみてください。わりと,左前腕が相手のアゴに向くでしょ? これです,これ。
Hearnsのビデオがある方は,見返してみましょう。左手をブラブラさせつつ,どのタイミングで左を突き刺してるか。ブラブラの左手が右手とクロスするくらいのタイミングでは左を伸ばすことはできませんから,このタイミングでは打ちません。左を突き刺すのは,左が外(左)に流れた瞬間に限られます。
つまり,ストレート・パンチの伸びに重要なのは,前腕の向きなんです。それをあの「アニキ」は,トンチンカンな解説をしちゃってますから,バカが過ぎます。あれで会長職が務まるのか,大きすぎる疑問ですよね。あれだけ技術的に無知な人間が,何を指導するんだか…。
もしTeteをもう一度,見る機会がある方は,その左手に御注目ください。そして,それに「まったく」触れない(たぶん触れる能力のない)解説者の解説に呆れちゃってください。
「気づけよ,おい!」,「ガードの高さと打ち難さに相関関係はねぇよ!」,なんてことを知っておくと,バカバカしく見えますから。まぁ,実際,バカなんですけどね。程度としては,鈴木奈々さん以下でしょう。
技術的にも無知ですし,ルールも読んでませんし…。何をやってんだか…。渡る世間はバカに満ちてます。
あ,あそこはカネがあるから,いいのか。世の中,カネですもんね。知識や情報よりも,もちろん技術よりも,カネです。