先日のIBF118戦で,王者のMarlon Tapalesが,試合には勝ったものの試合前日の計量で体重オーバーとなって,王座を剥奪されましたね。120だったとかで。
ポンドをkgに概算するには,2で割って1割を引く,っていうことでできちゃいます。
例えば,120だったら,半分にすると60。で,そこから1割である6を引くと54ですかね。わりとちゃんと計算すると54.43ですから,概算としては,こんなもんでしょう。
ちなみにリミットは118でしたから,2で割ると59で,そこから大雑把な1割である6を引くと53。小数点以下第2位まで算出すると53.52ですから,大丈夫でしょ?
ニュースを読むと,今後,Tapalesは階級を1つ上げて122で闘うそうです。あ,122も計算すると,半分にして61で,そこから「だいたい」の1割である6を引いて55になりますが,計算すると55.34ですから,これも概算としてはOKなはずです。
こうして筆者は,ポンドでのみ各階級を記憶してますから,kgにするには,わざわざ換算することになります。当然ながら,電卓使用ですけどね。
ちなみに,日本では取引にMKS単位系を使うことが義務づけられてるようで,そこから外れる「ポンド」は使用できません。そのため,ポンドはkgに換算して提示されます。
同様に「インチ」もダメですから,テレビとか自転車とかは,ほぼ誰もが「インチ」であることを知ってるにも関わらず,「28型」みたいな表現を使ってますね。「インチ」がアウトだからです。
で,Tapalesは王座を剥奪されちゃったわけですけど,このTapalesがもってたIBFは,「当日計量」ってのがありますね。
今の制度だと,試合の前日に計量して,IBF以外はそれでOK。でも,IBFは試合当日の午前中にもう1度,計量します。
これは,2000年2月26日に行われたArturo Gatti-Joey Gamache戦に起因します。
この試合は,両者ともに元世界王者の対戦として大きな注目を浴びました。当時はどちらもタイトルをもってなかったんで,141(63.96kg)で行われました。
試合前日の計量では,Gattiが140.5,Gamacheが140で問題なくパス。ですが,試合当日,非公式の体重測定では,Gamacheが145(65.77kg)まで膨らんだのに対して,Gattiは160(72.57kg)まで増量したそうです。
実に,夜から次の日の夜までに,8.85kgも増えたことになります。8.85kgですよ,信じられますか?
茶碗1杯の御飯で,だいたい150g程度です。あ,茶碗のサイズにもよりますけど,筆者の感覚でいう「普通」で150g程度。
ペット・ボトルでいったほうがいいとすると,デカめのペット・ボトルが2Lで2kgですから,これを4本ちょい飲み干した重さに相当します。で,それが全部吸収されたとして,やっと8.85kgですね。
前日計量になったのは,試合直前の急激な減量による脱水を避けるため,ってことでした。でも,Gattiっていう前例ができちゃったせいで,IBFは「リミットの10ポンド超」っていう試合当日の制限を設けたわけです。ですから,まぁ,剥奪されちゃいましたけど,Tapalesは118王者でしたから,当日に128(58.06kg)に収めてないと,これまた2時間の猶予時間を設定されたことになります。
そんなルールの下だと,141契約の試合で160になっちゃったGattiは,当然,アウトになりますね。
Tapalesはフィリピン人ですけど,タイ人選手は,わりと「予備計量に超過する」ことが普通になってます。
予備計量っていうのは,正式な計量の1~2時間前に体重計に乗ることですが,このとき,超過しておくんですね。例えば,試合が112(50.80kg)だとすると,予備計量には115(52.16kg)くらいにします。
で,計量になって,1回目に体重計に乗るときには,「ちょいオーバー」程度にするんですね。試合が112だとすると,112.5(51.03kg)にします。
そして,ここからがポイント。ガムを噛んで,牛乳ビンにツバを吐くんです。
牛乳ビンを使うと,1本で200gっていうことがわかりますから,上記の0.5ポンド超過だとすれば1本ちょいのツバを吐けばOK。こうするのがタイ人の慣習になっちゃってるんで,タイ選手が来日して「計量を1発でクリア」なんてことになったら,「早く落としすぎたんじゃね? 調整ミスじゃね?」って思っちゃっていいかもしれません。むしろ,「1回目の計量ではわずかにオーバー」っていうのが普通だったりします。
あ,そんなことをするんで,しばしばタイの選手は「マイ牛乳ビン」っていうのをもってることがあります。
国際式で最多はFloyd Mayweatherでしたっけ? Manny Pacquiaoでしたっけ? 最近は日本の選手でも複数階級を制覇することが普通になっちゃってますけど,減量をまるで美徳のように語るのには,ちょっと疑問を感じます。
名前は伏せますが,ある日本人元世界王者が,引退後にテレビでそんなことをいっちゃったことがありました。「減量なんて当たり前のことで…」みたいな,まぁ,いってしまえば「『減量美徳説』を全否定」みたいなことでした。
これに筆者は激しく同意したんですね。だって,階級を決めるのには,他人からの強制力は働かないんですもん。
「118で闘う」って決めたのは選手本人であって,誰かに強いられるわけではありません。無理なら122とか126とかに上がりゃいいわけでね。もちろん,耐久力とか攻撃力とかが,それに相応しいと思う必要がありますけど,そう考えられれば,上がっちゃっていいわけです。
一方,東京勤務の会社員が例えば「新年度から,大阪勤務だ」っていわれたら,たぶん従うでしょ? これには強制力があります。従いたくなければ,辞めるしかないかもしれません。
ほら,会社員のほうが,辛いでしょ? っていっちゃうと,「減量美徳説」を採る人たちに怒られちゃいそうですけど,そんなもんです。感覚的には,会社員のほうがキツいだろ,って感じ。
あ,そうそう。ボクシングの場合には,上記しましたけど,「2時間」の猶予が与えられます。つまり,計量にミスっても,そこから2時間以内にガム噛んだりサウナ行ったり縄跳びしたり,といったことで体重を減らして,リミットをクリアすればOKなわけです。
が,柔道とかレスリングとかは,「1発計量」なんだそうです。ある柔道経験者と喋ってて,それを聞いて驚きました。
例えば,「20時から計量」って通達があったとします。すると,ボクサーも柔道選手も,20時に体重計に乗るわけですが,柔道選手は,ここで0.1gでもオーバーすると失格になるそうです。
ボクサーは上記のように,そこから2時間以内に体重を落としきればいいんんですけど,柔道やレスリングの選手にはその権利はなくて,最初に体重計に乗ったときに,ちょっとでも超過してたら失格になるんだとか。
はぁ,厳しいのねぇ…。
逆にいえば,ボクサーって,優遇されてる気が…。あ,また怒られちゃう…。
話はちょっと逸れちゃうかもしれませんけど,昨今,ボクシングとかキックとかをダイエット目的でやる人が少なくないようですが,効果あるんでしょうか?
バッグ打ちは,運動の強度が激しすぎて,これは「無酸素運動」になっちゃうんですね。ですから,汗は出ますけど,体重は落ちません。あ,体脂肪の燃焼は小さい,っていうべきでしょうか。
あと,縄跳びもちょいと激しいんで,これまた体脂肪の燃焼は大きくありません。
体脂肪を燃焼させるには「有酸素運動」をする必要があるんですけど,これはおおむね,雑談をしながらできるくらいの運動,だと思ってください。
サッカーの選手が準備運動で,ダラダラと走ってるシーンがありますね。あれが「有酸素運動」。サッカー選手の体脂肪率が低いのには,あの「ダラダラ運動」が有効なようです。
ボクサーやキックの選手が痩せてるのは,日常的に運動してるからであって,バッグ打ちなんかを激しめにやっちゃうと,充実感こそ大きいかもしれませんけど,体脂肪の燃焼は期待できません。もっと端的にいっちゃうと,「痩せません」。
ダイエット目的のボクササイズ会員に「バッグ打ってて!」っていう会長さんがいたら,「コイツ,まったくわかってねぇな」ってことになります。
あ~,また怒られそう。