もっと気になることがありました。「García」です。「García」ですよ,「García」。
この姓を日本ではほぼ確実に「ガルシア」って平坦にいいますけど,より正しくは「ガルシーア」ですからね。先日の『WOWOWエキサイトマッチ』で,Mikey Garcíaの試合を流してましたが,まぁ,慣例通りでした。つまり,間違いです。これ,本人にいっても,通じないんじゃないでしょうか?
コッテコテの英語圏の英語ルーツの「Garcia」であれば,「ガーシャ」っぽく読みます。が,スペイン語をルーツとする場合,「García」は「ガルシーア」のように後ろアクセントで読むのが正解。Mikeyも,WBC147の「Danny García」も,どちらも「ガルシーア」と読みましょう。平坦に「ガルシア」って読む人を,心の中で嘲笑しながら…(いや,笑わなくてもいいんですけどね)。
で,今回はスタンスの話。
あの,「科学」を標榜する,実際には記憶依存の昔話オヤジが,スタンスの広い外国人選手を捕まえて「こうして腰を落とすんですね」っていいますけど,これ,どこが科学なんでしょうか? 「科学」は,どこにあるんでしょうか?
要は,重心の位置を保つことに重きが置かれます。
ピラミッドを思い浮かべてください。底が四角形で,横から見ると三角形をしてますね。
この物体の重心は,中央の,下のほうに位置してると思われます。
「重心」っていうのは,その物体の重さがかかってる部分で,そこから真下に下ろして地面と接するところに足がないと,転ぶんですね。逆にいうと,重心の位置からまっすぐ下に下ろしたところに足があれば,転びません。
これとは逆に,ピラミッドを上下逆さにしましょう。すると,地面に着いてるのは,わずかな面積だけですから,転ぶでしょ? 重心から真下に下ろしたところに足がないと,このように,転ぶんです。
つまり,スタンスをある程度,広くすると,上体をわりとデカめに振っても,転ばないことになります。
逆を考えましょう。
古典的な韓国選手にしましょうかね。前後のスタンスは狭くて,前傾気味に前進してくるスタイルをとりがちです。
こうして,前後のスタンスが狭いと,前後に上体を触れないことになります。前後に足幅を開いてないんで,前後に上体を振ると,そのときの重心の位置が,容易に「足のないところ」に行ってしまうんです。
すると,よほど踏ん張ってないと転ぶことになりますから,上体を振り難くなります。
一方,スタンスを前後に広めにとっておくと,上体を前後に振っても,そのときどきの重心の位置からまっすぐ下に下ろしたところに足がありますから,転びません。ですから,安心して上体を前後に触れます。
つまり,スタンスを見ると,その選手の上体の動きの大きさが想像できちゃうんですね。決して,腰を落とすことが肝心なんじゃなくて,スタンスによって動きが制限されることが起きるんです。あ,逆にいうと,動きが制限されるんじゃなくて,動きの幅ができる,ってことね。
石をいくつも積み重ねる人がテレビに出ることがありますけど,あれは,重心の位置をみつけるのが非常に上手い人です。石と石なんて,ほんの一点しか接触しないのに,その接触点の真上に,その石の重心を位置させる達人,というわけです。筆者ごときにゃ,マネできない芸当です。
と,こういうのを「科学」というべきな気がしませんかねぇ? グダグダと,その人物「だけ」の記憶に依存したことを喋るのの,どこに科学があるんだか…。
かつての辰吉丈一郎選手を記憶してる方もいることでしょう。辰吉選手って,日本選手にしては,スタンス広かったでしょ? スタンスが広かった分,上体を自由に振ることができたんです。
が,辰吉選手の調子が悪いときって,どんどんスタンスが広くなって,前に体重が傾いていってましたね。そうすると,前にしか上体を触れなくなっちゃいます。調子が悪いからそうなるのか,そうなるから調子が悪くなるのか,どっちが先なのかはわかりかねるとしても,スタンスと体重の位置を見ることで,その選手の動きの制限が見てとれちゃう,ってことになります。
そうなった場合には,「突っ込みすぎだ」みたいな指示よりは,「もうちょっとスタンスを狭めにしよう」みたいな指示のほうがいいように思います。より「精神的でない」指示をするわけです。まぁ,大昔の選手ですけどね。
ということで,スタンスはその選手のスタイルを見る上で重要です。そして,あの「科学」を標榜するオヤジには,少しの科学も感じられません。