音引き「ー」を入れるだけのような気が…

三浦隆司選手とMiguel Románの試合は大熱戦でしたが,あれ,御覧の通り「Román」ですからね,「Román」

スペイン語は英語と違って,アクセントの位置が明確です。通常はケツから2番めの音節にアクセントが位置してて,例外の場合には上記の「Román」のように明示されます。

母音で終わる語は,ケツから2番めにアクセント。子音で終わる語の場合は,「s」か「n」で終わる語以外であれば,ケツにアクセントが位置します。ですから,「Román」がもしアクセント記号なしの「Roman」っていう名前だったら,アクセントは前に来て,それこそ「ローマン」って風に読みます。

でも,「Román」ですからね,「Román」。

これは姓の場合も名の場合も同様で,WBCの115王者・「Román González」も,かつてのWBC115王者(あ,同じだ)「Gilberto Román」も,どちらも「Román」です。

どうやら,「Román González」に「ロマゴン」っていって通じなかったようですけど,まぁ,それも自然でしょうね。だって,木村拓哉さんを突然「ムラクヤ」って呼ぶようなもんですから。「そこか?」って思うでしょ?

あ,上記しましたけど,「González」っていう語も,アクセントの位置が変わってます。「変わってる」っていうか,明示されてます。真ん中です。カナで書くとしたら,「ゴンサーレス」でしょうかね。

WOWOWはせっかく「González」を「ゴンサレス」って濁らなくしたのに,アクセントの位置は無茶苦茶なまま。どうなってんでしょうか? 頭,悪いんでしょうか?

アクセントの位置が変わると,雰囲気が大きく変わります。

例えば,「春夏秋冬」は,いずれも関東と関西とでアクセントの位置というか,イントネーションが逆になりますね。関東では「春」を頭を強くいいますけど,関西では後ろが強くなります。

ちょっと前に流行った『アナと雪の女王』の「アナ」を,通常であれば頭アクセントで発音しますが,これを後ろアクセントでいうと,卑猥に聞こえちゃうでしょ。アクセントが違うと,意味も変わっちゃいます。

かつて,三浦選手と同門の粟生隆寛選手がメキシコのHumberto Gutiérrezと闘ったとき,リング・アナも実況のアナも,このメキシカンを「グチェレス」っていってました。で,Gutiérrez自身,名前をコールされたときに,ポーズをとりませんでした。

推測ですけど,自分がコールされたことに気づかなかったんでしょう。

だって,「グティエーレス」を「グチェレス」ですもん。アクセントの位置も,音も違うんですから。

結局Gutiérrezはあっさりと倒されちゃいましたが,異国で名前を呼ばれないまま沈むのって,どうなんでしょうねぇ…。

音の違うは別として,アクセントの位置は,音引き「ー」を入れるだけで,どうにかなりそうな気がしてます。

あ,アルゼンチンのサッカー選手・Diego Maradonaは「ディエゴ・マラドーナ」って表記されますね。あれ,正しいっぽく書くと,「ディエーゴ・マラドーナ」になります。姓はいいとしても,「Diego」は「e」にアクセントが位置してます。 でも,同じアルゼンチンの「Marcos Maidana」は「マイダナ」って書かれちゃいますが,これ,なぜなんでしょうか。これも「Maradona」同様に,ケツから2番めの音節にアクセントがあって,いわば「マイダーナ」って感じに読むのが正解

ね,「ー」だけで,済みそうな感じでしょ?

内山高志選手と2連戦した「Jezreel Corrales」も,「コラレス」じゃなくて「コラーレス」。無茶苦茶でしょ。スペイン語がわかることになってるあの人物も,おかしなアクセントのままですから,不思議です。

そういえば,ずいぶん前にWBCの会長さんを「スレイマン」って書いてメールくださった方がいました。これなんか,失礼ですけど,悪い例でしょうね。彼の姓は「Sulaimán」ですから。カナで書けば「スライマーン」でしょうか。これを「スレイマン」って書いちゃうのは,よほどのアメリカかぶれか,日本の専門誌に「洗脳」された結果だと推測されます。

クセの問題じゃなく,間違いですからね,これは。通じない危惧がありますから。

大昔の名選手の「Roberto Durán」も,日本では「デュラン」って書かれますが,より正しくは「ドゥラーン」です。

そうそう,かなり前の話ですけど,筆者が外人さんと喋ってたときに「デュランの右のタイミングは絶妙だよね,怖いよね」ってことを英語でいったら,これが通じなかったことがありました。ボクシングの話をしてたにも関わらず,です。

指摘されましたよ。「ドゥラーンだろ?」って。筆者も「そうそう,ヒゲのパナマ人!」って同意。やっと話が通じましたとさ。

まぁ,日本人同士で日本語で話してる分にはいいんでしょうけど,もし外国人と喋る機会がある場合には,正しいアクセントを憶えておいたほうがいいでしょう。ホント,通じませんから。そういう意味では,専門誌やWOWOWは,タチが悪すぎますよね。あれは意図的なんでしょうか? それとも,ホントにわかってないんでしょうか?

「Román」や「Durán」以外にも気になるのが,「Rubén」ですかねぇ。これ,カナで書くとすれば「ルベーン」です。

そう,御存知の「Rubén Olivares」は,カナで書くと「ルベーン・オリバンレス」っぽくなります。間違えないと「ルーベン」とは読みません。つまり「ルーベン」っていっちゃってるのは,間違いです。あの横分けオヤジ,間違ってます。そして,彼に洗脳されて間違いが広まってます。

あ,間違ってるのはボクシング・マスコミだけではありません。

今のではなく,先代のフィリピンの大統領である「アキノ氏」ですけど,あれ,「Aquino」で,アクセントは真ん中ですから,カナで書くなら「アキーノ」ですからね。

「アキノ」っていっちゃうと,日本語の「秋野」と同じ読みになるでしょ。それは間違いです。

こういうこと知ってて困るのは,こっちが間違ってると思われちゃうこと

ずいぶん前に日本のボクシングの話をしてて,「帝拳リナーレスって,ショートがまるでできないよね」ってなことをいったら,「リナレスだろ?」っていわれたんですね。いやいや,「Linares」って,「リナーレス」のほうが原音に近いはず。なのに帝拳ジムが誤ったカナ表記をしてるせいで,それが一般化というか固定化しちゃって,ちゃんとしてるっぽい発音が間違い扱いになっちゃうんです。

「ドゥラーン」にしても,そう。頭の音は,「デューク更家」さんの「デュ」ではなく,「DIY」の「ドゥ」ですからね。ホントは。それが正解なのに,誤ってるほうが正しい扱いになっちゃって,こっちが間違ってると思われちゃう害があります。お前が間違ってんだ,っつぅの…。

これが例えば,日本にないような「æ」みたいな音なら諦めもつきますけど,日本に普通に存在する音ですもんねぇ。

あ,思い出しちゃいました。

桃井かおりさんが「SK-II」のCMやってた頃に「エスケートゥー」って発音してましたが,もし視聴者が日本人に限定されてなければ,そっちでいいような気もするんですけど,どうなんでしょうか? あ,だとすれば,日本人と話すときは「リナレス」って意図的に間違えるのが正解なんでしょうかね。

それから,またメキシカンの話に戻ってしまいますけど,かつてバンタム級を沸かせたAlfonso ZamoraとCarlos Zárateは,「Zárate」は「サラテ」でいいとしても,「Zamora」は,おそらく「サモーラ」っていわないと,本人に伝わらないと想像します。だって,変なんですもん。